2006年9月 6日 (水)

熱狂のヴェローナとザルツブルク♪

0906 イタリアのヴェローナとオーストリアのザルツブルク。毎年夏、世界的に有名な音楽祭が開かれ、大変な賑わいを見せるこの二つの街で、最高級のオペラやコンサートを楽しむという、音楽ファンには堪らない特別企画ツアーに先日同行させて頂きました。
 古代円形闘技場で行われる「ヴェローナ野外オペラ」、そしてモーツァルト生誕250周年で例年以上の盛況を見せている「ザルツブルク音楽祭」。この二つの音楽祭において、二つの名作オペラと名門ウィーンフィルのコンサートを鑑賞するという何とも贅沢なツアーでした。
 北イタリアのミラノとヴェネツィアの中間にあり、シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」の舞台としても知られる古都ヴェローナは、街全体が世界遺産となっており、中世の面影を随所に漂わせています。中心部には、紀元1世紀に造られた古代ローマ時代の円形闘技場(アレーナ)があり、すっかり街に溶け込んでいます。ヴェローナのアレーナは、ローマの巨大なコロセウムよりもひと周り小さいのですが、原型を留めていないローマの「遺跡」とは違い、大理石でできた階段状の観客席などがほぼ完全な形で残っています。そして、古代ローマ人による建設から二千年以上経った現在もオペラやコンサート用に利用されている「生きた」劇場なのです。ヴェローナの夏の風物詩となっているのが、毎年7~8月の間にこのアレーナで行われる野外オペラ。毎年、「アイーダ」、「蝶々夫人」、「椿姫」などといったイタリア・オペラの名作が日替わりで上演されていますが、今回、私たちが鑑賞した演目は、ビゼーの最高傑作『カルメン』でした。全4幕の大作は、幕間の3回の休憩時間を含め、何と計4時間!!大規模な舞台セットで繰り広げられたオペラは2万人収容の会場全体に響き渡る極上の歌唱とオーケストラの素晴らしい演奏、観客を決して飽きさせない演出で、非常に迫力があり、もはや音楽芸術の域を超えた一大スペクタクルのようでもありました。
 会場は、野外のため、夜が深けるごとに気温は低くなって行きましたが、常に観客の興奮による熱気に包まれ、4時間という時間があっという間に過ぎ去っていったようにも感じられました。

尚、屋外(オープンエア)の会場のため、音響に関して多少心配をしていたのですが、全く杞憂でした。石造りのアレーナは非常に音響がよく、漆黒の夜空の下という環境が、屋内のオペラの重厚感とは異なるロマンティックな雰囲気を会場全体に醸し出していました。
 鳴り止まない拍手喝采でオペラが幕を閉じた頃、気付いたら、既に日付は変わっていました。まさに“真夏の夜の夢”のようなひとときをこのような素晴らしい場所で過ごすことが出来た幸福を身に沁みて感じながら、そしてオペラの余韻に浸りながら、会場を後にしたのでした。このような野外オペラの魅力を存分に味わい、お客様たちも皆様大満足で、グループ全体が興奮冷めやらずといった感じでした。中には野外オペラに完全に魅了されてしまったようで、来年も是非来たいと仰っていたお客様もいらっしゃいました。

 そして、もう一つの「ザルツブルク音楽祭」も大変素晴らしいものでした。今年2006年がモーツァルトの生誕250周年に当たるため、モーツァルトが生まれた街ザルツブルクは、年間を通じてモーツァルト関連の行事やフェスティバルが行われており、街中がモーツァルト一色に染まっています。モーツァルトの故郷ザルツブルクは今まさに最高の盛り上がりを見せ、世界中のモーツァルトを愛する音楽ファンがこの小さな古都に集まっています。コンサートやオペラの終演後、会場周辺だけでなく、レストランは何処もほぼ満席! 如何にこの街が賑わっているかが良く分かります。 ちなみに音楽祭に参加する人々は皆とびっきりのおしゃれをしているので、すぐに分かります。 コンサートやオペラをこれから鑑賞するという人々は、素敵なドレスやスーツに身を包み、高鳴る期待と興奮に胸を躍らせているといった様子。鑑賞後の人々は、興奮冷めやらずといった感じで、皆でその感動を語り合い、本当に楽しそうです。
 私達は、まず、昼間に行われたウィーンフィルハーモニー管弦楽団のコンサートを楽しみました。会場は、この音楽祭のメイン会場である祝祭劇場の大ホール。そして演目はもちろんモーツァルト。“最後の三大交響曲”交響曲第39番・第40番、第41番「ジュピター」で、指揮は、今世紀を代表するあのニコラウス・アーノンクールという非常に豪華な組み合わせでした。私たちは、アーノンクールがオーケストラに向けて発する掛け声がときどき聞こえ、額を流れ落ちる汗までも見えるくらい前方の座席でしたので、自ずと感動は高まっていきます。非常に人気の高い三大交響曲という演目は、祝祭劇場という素晴らしい会場、現代の巨匠アーノンクールによる指揮、世界最高のオーケストラの演奏、という最高の条件が重なり合い、今までに誰も聴いたことの無いような素晴らしい交響曲に昇華されていたように思います。
 第41番の演奏が終わった瞬間、「ブラボー」という声が会場の至るところから沸き上がり、観客は総立ちで拍手喝采。スタンディング・オーベイションで、素晴らしい演奏を聴かせてくれたウィーンフィルの団員とアーノンクールに対して、感動の拍手を送ったのでした。
 そして、同じ日の夜、同じ祝祭劇場・大ホールで行われた、モーツァルト作曲のオペラ『ドン・ジョバンニ』を鑑賞しました。ザルツブルク音楽祭で行われるモーツァルトのオペラはここ数年、かなり現代的にアレンジされた演出で、その斬新さが大きな話題となっていましたが、今年もその傾向は変わらず、現代風の刺激的で斬新な演出に、初めて見た観客は驚きを隠せないといった様子でした。ドン・ジョバンニを初めとする登場人物は現代の若者が着るようなカジュアルな服装で、舞台装置は白一色の非常にシンプルなもの。きっとモーツァルトが見たら、びっくり仰天することでしょう。しかし、初めは衝撃的な驚きを隠せなかった多くの観客も、次第に舞台に引き込まれていき、心から現代的に進化した『ドン・ジョバンニ』を楽しんでいるようでした。演奏はウィーンフィルが手がけ、指揮は弱冠31歳ながら若手指揮者の代表として高い評価を受けているダニエル・ハーディング。ウィーンフィルによる極上の演奏は、現代の『ドン・ジョバンニ』にうまくマッチしていて、最終的には、観客の大部分が大満足。会場全体が興奮の渦に巻き込まれていました。

 250年も経った今もそして恐らく今後もずっと永遠に、モーツァルトの音楽は世界中の人々に愛されていくことでしょう。
 今から250年前に天才音楽家がこの世に生まれたことに感謝し、ともにモーツァルトの記念すべき年を、故郷ザルツブルクで多くの人々とともに祝うことのできた喜びを心から実感しつつ、お客様とともに祝祭劇場を後にしたのでした。 (江崎 映理)

ザルツブルク音楽祭のツアーはこちらから

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