2007年3月26日 (月)

岩絵の静かなメッセージ

P3060047 先日、未知のアルジェリアより帰国しました。

アルジェリアという国は地中海に面した北アフリカに位置していて、西はチュニジア、東はリビアに挟まれた国。この国にはカルタゴ・ローマ遺跡や19世紀フランス植民地時代の優雅な街並みなど、見どころは無限のようにたくさんあります。その中で、最近日本でじわりじわりと注目を集めつつあるのが「タッシリ・ナジェール」という、古代の岩絵が残っている台地。

そのタッシリ・ナジェールはアルジェリアの南部、サハラ砂漠のど真ん中にあります。飛行機と4WD、そして最後は自分の足で岩山をよじ登り、さらに台地上をテクテク歩き続けて、ようやくたどり着くことのできる、遥かな奥地にあるのです。台地上は、汚れ無き神聖な大地といった、独特の雰囲気のというか、ピーンと張り詰めた空気を感じます。ゴツゴツしたむき出しの岩や風化した奇岩がそそり立ち、まるで月面のような幻想的な大地をくる日もくる日も歩きながら、岩絵を探し求めます。

実はこの岩絵には、さまざまなメッセージが隠されているのです。私たちが大変な苦労をして岩絵を目指す理由はもしかしたら、古代人からのメッセージを受けとるためなのかも知れません。サハラ砂漠はかつては水と緑が溢れる豊かな大地だったという驚きの事実。でも岩絵にはその証しがしっかりと刻まれているのです。魚やワニなどの水生動物をはじめ、なんと古代人が悠々と泳ぐ人々までしっかりと描かれているのです。今の荒涼とした風景からは想像もできないような、豊かな大地が広がっていたに違いありません。古いもので約1万年前、新しいものは1200年前までの岩絵が無言で私たちに語りかけるのです。岩絵のほとんどは文字のない時代に描かれたもの。べドウィンのガイドが教えてくれる説明はあくまで推測にすぎません。つまり正確な答えを知っている人は誰もいないのです。当時の人々が何をしているのか、宇宙人のような格好は果たして何なのか、不思議な模様が何を意味しているのか、どんな風にも想像できてしまうところに岩絵の面白みを感じます。

疲れた体を引きずり、やっと岩絵を目の前にして、疲れた頭をフル回転させている瞬間・・・。古代に浸っている瞬間の、その何とも言えない心地よさ、爽快感が印象的でした。

何万年ものあいだ生き続けてきた岩絵。その一方で、わずか十数年前に写真で記録された岩絵が忽然となくなっているのも、紛れもない事実。急激な気候の変動でしょうか。古代人が残した岩絵は、サハラ砂漠の奥地で今も静かに、私たちにメッセージを送り続けています。(上田 晴一)

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