2007年5月11日 (金)

フランス・ロマネスク 静謐なる石の芸術に魅せられて

070511 ひんやりとした聖堂内の空気、小さめの窓から差し込んでくる柔らかな春の陽射しが石の床に光の輪を描く。華美な装飾は殆ど無く、石そのものの質感が迫ってくるような重厚さを持つロマネスクの教会。しんとした沈黙と祈りの気配に満たされた空間をゆっくりと味わう。

春の野花満開の風景の中、フランス屈指のロマネスク建築を巡るツアーに行ってきました。
ブルゴーニュ、オーヴェルニュ、ぺリゴール、ケルシー、ラングドック=ルシヨン、プロヴァンス、フランスの田舎町の美しさが凝縮されたような地域を縦断しながら、各地に点在するロマネスクを味わう日々はとても満ち足りていました。
遥かかなたまで連なる緑豊かな丘に色とりどりの花畑が広がる、まるで天国のような風景の中に中世の姿を留めた小さな村が現れる瞬間、感動の溜息を通り越して思わず息を飲みます。こんなにも美しい景色がこの世に存在するなんて、と。

この世のものとは思えない風景の中、800年以上の時を経て静かに佇むロマネスク教会。ずっしりとした石の柱を見上げれば、そこには聖書の世界を雄弁に語る彫刻がびっしり。ギリシアやローマの神殿彫刻に見られるような優雅さや、ルネサンス彫刻に見られる完璧な写実性とはかけ離れているけれど、中世の人々の信仰心が限られた空間にぎゅっと詰め込まれた傑作です。大理石を使ったりせず、その教会が建てられた土地で採れる石に直接刻み込まれた彫刻は、人間の持つ想像力の無限の可能性を感じずにはいられないものばかり。名も無き石工が刻んだ物語は驚くほど大胆な構図、はっとするほど深く繊細な表情に溢れ、魔法のような引力で私達の目を釘付けにします。

ロマネスク建築の魅力は修道院の回廊にも溢れます。中庭に降り注ぐ光が石造りの回廊の影をより濃いものにし、その光と影のコントラストがまるで芸術写真のような空間を創り出します。回廊の美に感動するのはロマネスクの中でもシトー派の修道院。装飾を殆ど排除したシトー派の建築では他のロマネスク建築に見られるような柱頭彫刻やタンパンの姿はありません。しかしその潔癖で完成された建築技術は見るものを魅了し、心の深淵に導いていくような回廊はいつまでも佇んでいたい静寂な空気に包まれています。人里離れた場所を選んで建てられたシトー派修道院の回廊はただ鳥の囀りだけがこだまする、心が浄化されるような空間です。

日本の建築は木の文化であり、西洋の石建築とは全く異なるのですがロマネスク建築はどこか心にしっくりくるところがあるのか日本人に人気が高いそうです。信仰の精神を建物の表面を飾ることで表現するのではなく、控えめにしかしにじみ出るような厚みで刻み込んだ空間。目ではなく心で感じる回廊の美はどことなく日本の禅寺に通じるものがあるような気もします。
フランスの宝物ロマネスクを巡る旅、心洗われる風景に出会いに行きませんか? (宮澤詩帆)

フランス・ロマネスク関連のツアーはこちらから

|

世界の芸術情報」カテゴリの記事

西欧・南欧情報」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。