広い広いシベリアの大地、9,288㎞の列車の旅
朝は、空が明るくなった頃に起きて、廊下に出てみんなで眠い目をこすりながら朝日を眺めます。身支度を整えたら食堂車でロシア料理の朝食、そしてそれぞれの部屋に戻って思い思いの時を過ごします。昼食後は廊下にでて他愛ないおしゃべり。長く停車する駅ではホームに降りて地元の奥さんの手作りピロシキをつまみ食い、元気な人は列車内の先頭車両から最後尾車両までシャッターチャンスを狙って行ったり来たり。夕焼けを見送ったら気の向くままにベッドにもぐり込み、そんな感じで一日が終わります。
車窓からの風景は、多くの方が想像する通り、ほとんどが白樺と松の木の森です。ふと、窓の外を見ると少し黄色く色付いた木々が目に入ります。心地の良い列車の揺れに少しうとうとして、何にも考えない、ゆったりとした時間が流れます。どのくらい時間がたったのでしょうか、読んでいた本から目を上げてまた窓の方を見ると、さっきと変わらない白樺の木。
白樺の木は「美しいロシア人女性」と称されるそうです。白く細い木は白い肌の美しい女性、キラキラと風に揺れる枝と葉は女性のイヤリング。今の時期は緑の葉が黄色く染まっています。曇天模様の空の下のでも、白樺の木を見つけると森の中は明るくなりました。ずっと変わらない同じ景色。でも時には小さな村、いくつかの小さい家が見えたりもします。余計な飾りなど無い素朴な木の家です。レースの白いカーテンと一輪の赤い花だけで窓を飾った小さな木の家は真っ青な秋の空とシベリアの緑の大地との間に佇んでいました。冬になったら、雪で埋もれてしまいそうなこの小さな家の窓からからも暖かな明かりにつつまれた家族の様子が見える事でしょう。
ロシア号という家で数日一緒に過ごしていくうちに、私たちはまるで一つの家族のように仲良くなりました。広い広いシベリアの大地を駆け抜けるロシア号もついにモスクワ駅に到着。長いと感じた9288㎞。私たちは完走した達成感と、永遠に続くと感じたあの「時」が終わってしまった寂しさの両方を感じていました。終わってみると全てが贅沢な体験でした。写真や言葉では伝えきれない列車の旅の感動を、皆様にも伝えたい気持ちでいっぱいです。
(関根)
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