世界の果て南極への旅(連載3/3)~南極温泉と大迫力のクルージング~
南極にはペンギンたちとのふれあいの他にもまだまだたくさんの魅力があります。皆さんは南極にも温泉があることをご存知でしょうか?その名の通り「南極温泉」と呼ばれていますが、実際は温泉というか、海岸に地熱によって温められたお湯が湧き出ているというカンジなので、ヤケドしそうなくらい極端に熱い所と、ビックリするくらい冷たい南氷洋の水(この日の水温は2度!)が一緒になっている訳です。慣れてしまえばうまいこと丁度良い温度の所を探して寝そべって温まる事ができました。運良く快晴に恵まれ、たくさんの人が水着になり、寒いだの熱いだのギャーギャー言いながら、それぞれ入浴を楽しんでいたようです。日本の温泉のように温まって疲れを癒すというものではありませんが、入浴した方だけに「南極温泉会員証」なるものがもらえます。証明書には、「類まれなる愚か者である事を証明します」というような事が書かれてあり、良い話しのネタとなります。天候があまり良くない時は2~3人しか入らない時もあるそうですが、今回の入浴人数は全部で48人!過去の南極ツアーの中で新記録を更新してしまいました。
そして、本船から上陸する際に使用するゾディアックと呼ばれる特殊ゴムボートに乗って氷河のすぐ近くをクルージングし、南極の神秘に迫る大迫力のゾディアッククルーズも楽しみの一つです。周りを美しい氷山と南極半島に囲まれた湾は波一つなく穏やかで、済みきった青空の下、海面上をボートが滑るように進み、水面にスーッと水の輪を描きます。キリリと引き締まった空気も澄んでいて、最高にすがすがしい気分です。大小無数の青い氷。塔のようにそそり立つ巨大な氷山。透き通って見える水面下にはずっと大きな塊が潜んでいるのがわかります。お昼寝中のヒョウアザラシや真っ白で銀色にも見えるカニクイアザラシに出会いました。ヒョウアザラシは可愛い顔をしてかなり獰猛で、ペンギンやカニクイアザラシを食べてしまうんだとか。ペンギン最大の天敵です。さまざまな造形を創り出している氷山も素晴らしかったです。割れ目からはグレーシャーブルーが輝き、一つ一つ形の違う氷河の造形美にただただ感激するばかりでした。よく晴れた日は光の当たり具合がちょうど良く、美しい氷山をよりいっそう白く美しく輝かせていました。曇天の日には鉛色にくすんでいる氷の世界が、晴天になると太陽の光を受けて紫、藍、青、白と微妙に変化します。太陽高度が低いので、その変化に赤などの色も加わり、幻想的な世界が創り出されるのです。しかも「氷山の一角」とよく言われるように、見えている巨大な氷の海面下に約9倍もの大きさの塊が潜んでいるのです。他の大陸とは比較にならないスケールの大きな氷河地形、その一つひとつの生い立ちはわからなくても、無言の力となって我々に迫り、圧倒されてしまいました。波一つない静かな氷の世界と野生動物たちとの出会いがとても印象的でした。
この日の夕食は屋外デッキにてバーベキュー。風は冷たく頬をさし、寒さに弱い私は手袋をはめ、ネコのように背中を丸めていましたが、美しい氷山に囲まれての食事はやっぱり格別です。途中からバーベキューの炭に混じって雪も降り始めました。雪の中でバーベキューなんて聞いたこともありません。南極ならではの体験です。急いで食べないとすぐに冷めてしまうのが難点ですが、白い息を吐きながらホットワイン片手に談笑している人々は皆笑顔でした。考えてみれば普通の食事の際も、窓の外には白い卓上氷山が見えていたり、ザトウクジラが連続ジャンプしていたり、こんな贅沢な食事というのはそうそう体験できないことです。
『世界は一冊の本だ。旅をしない人はたった1ページ分の世界しか知らない』これはある冒険家の言葉です。私たちの暮らす地球上に美しい景観は数多くありますが、最後の聖地といわれる南極は別格と言えるでしょう。南極半島には心揺さぶる感動が溢れています。自然を謳歌する野生動物と出会い、太古から変わらない脅威の大自然を求め、さあ、大冒険のクルーズへ!!!
(添乗員:村上大嗣)
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