エーゲ海の青に出会うギリシアへ
先日「ギリシア周遊とエーゲ海クルーズ」の旅より帰国しました。春真っ盛りのギリシアはどこに行っても野花が咲き乱れ、古の遺跡を可憐な花が包む様子は神話の時代を髣髴とさせる美しさでした。
アテネのアクロポリス、エーゲ海のクルーズ、数々の神話を生んだ島々・・・と見所は盛りだくさんの旅でしたが、今回はその中でもメテオラに焦点を当ててご紹介します。
断崖の岩峰が連なるというメテオラはアテネから車で6時間ほど北上したテッサリア地方にあります。麓の町カランバカが近づく頃、正面に切り立った石峰が見えはじめす。高いもので海抜600メートルを超えるものもあるこの岩峰郡の頂上にあるのがかの有名なメテオラの修道院です。1988年に世界遺産に登録されたメテオラですが、実際に訪れて仰ぎ見たその姿は衝撃的でした。
垂直を超えてむしろオーバーハングしているくらいの切り立った崖を下から見上げると、この上に建物を建てようということを考えたことそのものが信じられない気持ちになります。かつて文明社会の先駆けとして地中海を支配したギリシアですが、中世以降の歴史では国家存亡の危機を何度も繰り返してきました。その苦しい時代のギリシア人の精神的な支えとなったのがギリシア正教への深い信仰心だったといいます。実際に目の当たりにしたメテオラの修道院の姿に、深い信仰心が作り出した奇跡を感じました。「メテオラ」とは「空中にある」ということを意味する言葉ですが、まさしく人智を超えた高みに存在する修道院の姿に圧倒されました。
全盛期には多くの修道院と数多くの修道士が暮らしたメテオラも、現在生きている(稼動している)修道院は6つだけです。かつては修行と信仰心から敢えて回覧を作らず、縄梯子で上り下りしていたという岩峰も、今では階段が作られ私たち観光客も岩を登らずとも修道院を訪れることができます(それでも十分大変ですが・・・)。あまりの絶壁に滑落して命を落とす修道士が後を絶たなかったにもかかわらず、熱い信仰心から階段を作ることを断固拒否してきたメテオラですが、20世紀にになってさすがに信仰心も大事だが命も大切にするよう総主教より指導があり、階段を作成したそうです。
修道院への階段を上っていると、かつて建築資材などを上へ吊り上げる際に使用したという「巻き上げ機」が見えます。本当に簡素な小さい滑車のみのこの道具でここまでの修道院を作り上げた修道士たちの情熱に驚かされます。頂上の修道院から下に広がる町と、遥か遠くにかすむピンドス山脈を眺めながら、信仰とはいったいなんなのか、と考えさせられたメテオラの訪問でした。(宮澤)
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