モンゴルの足跡 ~メルブ遺跡にて~(中央アジア)
先日、「中央アジア5ヵ国大周遊 17日間」のツアーより帰国しました。今回は寒さが和らぎ、春のお花がちょうど少しずつ咲き始めた頃。春の種まきの準備で畑を耕す農家の人々をよく見かけました。
このツアーは一度に5カ国もの国をまわってしまおうという贅沢なツアーです。前半は天山山脈を仰ぎ草原を旅するカザフスタン・キルギス、中盤は砂漠に広がる世界遺産を旅するトルクメニスタン、そして後半は雪解け水が流れるザラフシャン川と、沿岸のオアシスの都市を巡るウズベキスタン、タジキスタンへ。移動距離は4000kmを越し、日を追うごとに気候も景色も、人々の様子も大きく変化していく、長くても決して飽きることのないツアーです。
さて、中央アジアの国々を巡っていると、やはり様々な共通項に出会います。そのひとつが、「モンゴル帝国」。13世紀に大帝国を築いたチンギス・ハンが、それまで中央アジアに栄えていた文明をことごとく滅ぼし、何もない草原を砂漠にしてしまったというのは有名な話です。
旅の中で、私がモンゴルの影響を特に強く感じたのが、トルクメニスタンのメルブ遺跡でした。
メルブ遺跡は、紀元前6世紀からの歴史がある遺跡。砂漠を流れるムルガブ川のオアシスにできた都市遺跡ですが、度々流れを変える川にあわせて都も移動したため「さまよえる町」とも呼ばれます。
シルクロードの拠点として栄えたため、非常に国際色豊かで多くの人々で賑わい、かつては広い城壁内が人口過密状態だったそうなのですが、今はそれも夢の跡・・・。荒涼とした砂漠にぽつぽつと遺跡が残るだけです。
ここでは紀元前の遺跡から紀元後のものまで、広い時代にわたる遺跡の数々をご覧いただけます。
崩れかけた紀元前3世紀の城壁は、アレキサンダー大王の武将のもの。こんなところまでアレキサンダー大王が来ていたことに驚きです。またその城壁内には仏教遺跡があり、なんと仏教寺院跡としては世界最西端のもの。仏教の東端は日本、西端はなんとここにあったのです。これも感動的でした!また、7世紀の城跡大キズカラには13世紀にモンゴル軍があけた巨大な壁の穴があります。当時のまま、ぽっかりと穴があいたままです。この城は、モンゴルが攻めこんだとき、少女達が身投げをしたという悲しい伝説があるので、「乙女の城」とも呼ばれます。内部にはほとんど何も残ってはいませんが、特徴的なメルブ様式の外壁が美しい城跡でした。
だだっ広い砂漠の中にある広大な遺跡の数々。モンゴルがもし、攻めてこなかったらどんな街になっていたのでしょうか。
荒野と化し、静まりかえるメルブの遺跡を前に、中央アジアの歴史上、モンゴルの影響はやはりとても大きなものだったとしみじみと実感しました。
この遺跡はまだまだ発掘中で、どんな発見が足元に眠っているか分かりません。遺跡内を歩いていると、足元にたくさん落ちている陶器の破片。これも実は大昔の遺跡の一部なのでは!?ということでお土産に拾ったりもしました。世界遺産なのに、とても素朴で物売りの姿もなく、他の観光客の姿もない。広い遺跡がまるで私たちの貸切状態で、ゆっくりと見ることができました。
中央アジアの国々は、日本ではまだまだ情報が少ないですし、観光客もまだそれほど多くはない国です。遺跡や建物の素晴らしさももちろんですが、その素朴な様子や、何より人々のおもてなしが素晴らしい国々です。是非一度、中央アジアへ足を運んでみて下さい。
(安藤 幸子)
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