高原に浮かぶ、天空の要塞(シリア)
「薔薇色のペトラと巨大遺跡パルミラを訪ねる旅 9日間」より帰国しました。梅雨の明けきらない日本を離れ、カラッと心地良い砂漠の国を満喫し、あっという間に過ぎてしまった9日間でした。イスラム独特のゆったりとした空気の流れる街並みを歩き、旧約聖書の時代から刻まれてきた古い歴史に触れるこの2カ国は、弊社の数あるツアーの中でも特に大人気!真夏の暑さもなんのその。男性達は真っ黒に日焼けをし、女性の方々は中近東の風土にあった肌を露出しない服を着こなし、皆様夏休みを満喫されていたようです。
この2カ国の見所は何と言っても古代の隊商都市であるペトラとパルミラ。また死海リゾートでの浮遊体験も他所ではなかなか味わえません。しかし、それら魅力については、これまでにもこのブログにてたびたび語られてきましたので、今回は十字軍の数ある要塞の中で最も美しいと言われる「クラック・デ・シュバリエ」をテーマにしたいと思います。
ヨーロッパ諸国が聖地エルサレムの奪還のために十字軍を派遣したのが1096年のこと。そして1096年にこの地を訪れた彼らは、山頂にたつ城を占拠して頑強な要塞へと改築しました。4000人もの守備兵が駐屯できる規模を持ち、広々とした食糧貯蔵庫や13の塔を持つ外壁、堀に守られた内城など美しいだけでなく機能性も素晴らしい要塞。その堅牢さは、1188年にエルサレムを十字軍の手から奪還したアラブの英雄サラディーンでさえ攻め落とせなかったほどです。2006年には世界遺産に登録されています。
標高650mの丘の上にそびえるこの要塞へ向かって私たちのバスは坂道をどんどん登っていきます。のどかな牧草地帯が眼下に広がっていき、そろそろ到着か?という辺りで現地ガイドのアサディーさんが言いました。
「では皆さん、いいと言うまで目をつぶっていてくださ~い。」
何だ何だ?と思いつつ、目を閉じてしばらくすると、
「ではどうぞー。」
目の前には素晴らしいパノラマ風景と、当時の姿のまま白く輝くクラック・デ・シュバリエの姿がありました。映画で有名なアラビアのロレンスは、かつてシリア旅行で訪れたこの城の美しさを絶賛したとか。また「天空の城ラピュタ」のモデルになったとも言われます。なるほど高台の上にぽっかりと浮かんだ様なその姿は、「天空の城」という気もしてきます。
それから門の前でバスを降り、中へと進んで行きます。この要塞の内部には礼拝堂や食堂、何百頭もの馬が収容できる馬小屋、パン焼き窯のあるキッチンや大きなダイニングテーブルなどがそろっています。ゴシック様式の丸天井や装飾の施された壁が見事です。見張り塔のてっぺんからはシリア内陸部の地形が一望でき、遠くにはレバノン山脈もかすかに姿を見せます。地中海から40kmのこの地点は戦略上重要な地域であったことが伺えます。
最後は王女の塔が改装されたレストランでチキンバーベキューのガーリックオイルにフライドポテト。歩き疲れた後のビールはとてもおいしそうに見えました。
800年前の姿を変わらず残すクラック・デ・シュバリエ。この日はキリストの時代に使われていたアラム語をいまだに話すマルーラ村も訪れました。この9日間は毎日がハイライトの連続で、見ごたえのある遺跡に感動していると、あっという間に過ぎてしまいます。もしまだ中近東諸国に行かれたことのない方でしたら、最初に訪れる国としては是非ともお勧め致します。
(吉筋)
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