2008年9月 8日 (月)

世界無形文化遺産ワヤン・クリッの裏舞台(インドネシア)

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先日、「歴史遺産の宝庫・ジャワ島周遊と芸術の島バリ 7日間」の添乗より戻りました。
今回のツアーは、そのタイトル通り、インドネシアの遺産と芸術の魅力を余すことなくお楽しみ頂ける見どころ満載のツアーとなっています。
 中でも、インドネシアのあちこちで演奏される伝統的な打楽器“ガムラン”や、100人近い男性が「チャッチャッチャッ!!」と声を発しながら演じる大迫力の“ケチャダンス”、 世界無形遺産にも指定されている影絵芝居“ワヤン・クリッ”など、伝統芸能の数々は必見です。
 今回は、こうした伝統芸能を多く鑑賞し、インドネシアの伝統芸能をとことん極めるツアーとなりました。
 その数10,000とも言われるほど膨大な島数を誇る群島国家インドネシア。
 今回は、その膨大な島数の中の2つ、ジャワ島とバリ島を訪れました。
 同じ島国でも、さして大きな違いを感じることなく生活している私たち日本人にとっては想像しにくいことですが、インドネシアは一つ島が違えば、まるで違う国であるかのように、それぞれの文化の差は大きな振幅があります。
 例えば、バリ島ではヒンドゥー教徒が大半を占めているのに対して、ジャワ島ではイスラム教徒が90%以上占めていることからも伺えます。そんな多彩な文化を誇るインドネシアで、伝統芸能は多くのインドネシアの人々の心に共通する精神と なっています。

 本日はその中で特に印象に残った伝統芸能、“ワヤン・クリッ”についてご紹介したいと思います。Wa2
 ワヤンは「影」を、クリッは「皮革」を意味していることからも分かるように、ワヤン・クリッとは、なめした水牛の皮を透かし彫りにした人形を幕に映し出す影絵芝居です。
 その歴史は10世紀の宮廷文化に由来するとされており、当時は布に描いた絵巻を繰り並べて、音楽を伴い語ったと言われています。
 影絵になったのは15世紀~16世紀とされ、その文化は現在まで脈々と引き継がれ、現在は世界無形文化遺産にも指定されています。
 舞台は表からも裏からも観られるようになっていて、私たち観客はその両方から芝居を楽しむことが出来ます。裏舞台を覗いてみると、まず、人形の色彩の鮮やかさに目を見張ります。影絵芝居なので、どんなに鮮やかな色を付けても、客席から見えるのは幕に照らし出された黒色の影のみ。それにも関わらず、人形には、一体一体大変鮮やかな色彩が施されているのです。一見すると、無意味にも思える人形の彩色ですが、鮮やかに彩色された人形は、それがかつて宮廷文化のひとつであったことを物語っているかのように華やかで気品に溢れています。 
 それにも増して驚くのは、年老いた貫禄のある老人が、たった一人で数10本の人形を操っていること。
 さらによく見ていると、この老人は人形を操るのみならず、その声色を使い分けて人形の台詞を語り、情景描写の謡曲を謡い、さらには10人を超える伝統楽器“ガムラン”の奏者に指示を出しているではありませんか!
 この“ワヤン・クリッ”の指揮者とも言える芸人は、「ダラン」と呼ばれ今も多くの人々に慕われています。Wa1

 裏舞台では、鮮やかな人形の美しさとやわらかなガムランの調べに感嘆し、人形を巧みに操るダランの演技力と迫力に息を呑む。
 確かに一人のダランが演じていると確認した後、また表舞台から鑑賞する。しばらく観ていると、本当にこれを一人の老人がやっているのかと不思議に思い、また裏舞台に回ってみる。するとやっぱり、そこには一人の老人しかいない…場内には表舞台と裏舞台を行ったり来たりする観光客が沢山いました。
 私たちは、まるで狐に頬を摘まれたかのような不思議な気分で、ゆっくりと更けてゆく闇夜の中、影絵芝居を堪能しました。

 この芝居は単なる観光者向けの商業目的ではなく、現在でも結婚や出産など、おめでたい席では頻繁に上演されています。
 そしてそれは、夜が更けてから翌朝日が昇るまでゆったりとした時間の中で上演され、人々は芝居を見ながら酒を飲み、歌を歌って楽しむのだそうです。
 ジャワ島やバリ島といえば、リゾートやビーチのイメージが強いためか、まだまだ伝統芸能や遺跡に注目されることは少ないように思いますが、実は興味深い芸能や文化、遺跡が宝庫でもあるのです。ぜひ、まだ見ぬインドネシアを求めて訪ねてみてはいかがでしょうか。(兼井 友理)

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