2008年10月 3日 (金)

世界遺産のない国、ブータンの魅力

Tasicho_zong 先日、「幸福の国、ブータン王国 8日間」の添乗より帰国致しました。
 最近、数々の旅行番組で取り上げられたこともあり、以前よりは注目を浴びるようになったブータンですが、それでもまだ、その魅力は十分に知られていないように感じます。
 その一つの理由に、ブータンには「世界遺産」が一つもないことが挙げられるのではないでしょうか。世界遺産ブームが渦巻く昨今、世界遺産巡りこそ、ご旅行の目的とされている方も多いでしょう。そんな中で、世界遺産を一つも持ち合わせていないブータンは、今一つ、魅力に欠ける国と思われても仕方がないのかもしれません。
 しかし、世界遺産が一つもない国ブータンは、必ずしも、「世界遺産に匹敵するものがない」訳ではありません。むしろ、歴史的にも宗教的にも、重要な位置を占めてきた建築物が点在しています!!例えば、都市ごとに存在する「ゾン」と呼ばれる建物は、役所などの政治的施設と、寺院や僧坊などの宗教的施設とを兼ね備えた施設で、数100年に渡って機能している非常に重要な施設です。ブータンを旅行したことのある方なら、ブータンが「世界遺産級」の優れた建築物の宝庫であることを既にご存知でしょう。

Taktuan_temple それにも関わらず、ブータンに世界遺産が存在しないのは、実は、ブータンの人々自身が、「ゾン」のような政治的・宗教的建造物が世界遺産になることを強く拒んでいるからなのです。
 そして、その理由は全て、「物質よりも精神の充実」を拠りどころとした「国民総幸福量」という独自の概念に関係しています。優れた建築物が世界遺産となれば、それを目的とした観光客は増えるでしょう。観光産業から、より多くの外資を得る可能性が広がることは容易に想像出来ます。しかし、「お金や物質が人々を豊かにするのではない」という信念を持つブータンの人々は、世界遺産の登録によって観光客が増え、外資が得られることを、必ずしも自分達にとって良いことだとは考えていないのです。むしろ、観光地と化すことによって、自分達の心の拠りどころとする宗教的施設や生活に密着した政治的施設が、観光客でごった返すことを、何よりも恐れているのです。
Phunaka_zong 確かに、ブータンに世界遺産はありません。しかし、そこには、敬虔なブータン仏教の教えを元に、「国民総幸福量」を拠りどころに、伝統文化を大切に守りながら生活するブータンの人々の姿があります。世界遺産の登録よりも、自らの文化を独自に守ろうとするその姿からは、「国民幸福量」を貫こうとする信念の強さが伺えます。世界遺産の件数を一つでも増やそうと各国が躍起になっている中、ブータン人の姿勢は非常にしたたかです。私は、ブータンの人々のこうした信念こそ、ブータンという国の魅力であると感じています。
 精神の幸福を何よりも大切にするブータン。日々の喧騒から離れ、ブータンの人々の心の豊かさに一度触れれば、物質や金銭で心を満たすことが、いかに愚かで空しいことであるかに気付かされます。そして、世界遺産という指標だけでは、決して量り切れない、ブータンの素晴らしさに気付くことでしょう。ぜひ一度、幸福の国、ブータンに足を運んでみてはいかがでしょうか。(兼井)

ブータンへのツアーはこちら

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コメント

私がブータンを訪れたのは、もう10年程前です。棚田には稲穂が垂れ、温かな太陽と柔らかな風にそよぐ美しい風景。小学校に飛び入り見学に行ったら大歓迎してくれました。授業は英語で行われているのでみんなペラペラ。英語が出来ない私は満足に話もできずに悔しい思いをしたのをよく覚えています。心が癒される国でした。先日テレビでブータンの特集をやっていました。それはいかにブータンが国の自然を大切にしているか、国王の方針と教育の話でした。国民の9割が自分は幸福だと感じているそうです。田舎のおじいさんは「今あるものだけで自分は充分満足。本当に幸せです」と答えていました。また役所の人は「資源がみつかったら開発しますか?」という問に「きっとしないでしょう」と答えていました。「もっともっと」と求め続けることが幸福度につながるかどうか考えさせられます。世界遺産は無いけど、本当の幸せって何か考えさせてくれる国です。

投稿: 鬼頭陽子 | 2008年10月26日 (日) 01時38分

鬼頭 陽子様

 鬼頭様、お久しぶりでございます!
 先日はインドネシアのツアーにご参加いただきましてありがとうございました。
 
 10年も前にブータンにご旅行されているんですね!
 今でも、素朴な雰囲気が印象的なブータンですが、ブータンは今、ちょうど過渡期にあり、民主主義を取り入れたり、観光客を受け入れたりと、少しずつ変化しているようです。
 政治的にも、経済的にも、開発の波は確実にブータンに押し寄せています。鬼頭様がブータンを訪れた頃からは少し変化しているところもあるかもしれませんね。
 そうした変化を残念だと感じたり、今のままいつまでも変わらないで欲しいと思うのは、はやり物が溢れた国に暮らす私たちの驕りでしょうか。
 物質大国に暮らす私たちにとって、ブータンは本当に多くのことを考えさせてくれる国だと、私も思います。少しでも多くの方にブータンに足を運んで頂き、その良さを感じ取って頂ければと思っております。
 
 またぜひ、どこかでご一緒できればと思います。
 急に冷え込んできましたので、どうかお体にお気を付け下さいませ。

投稿: 兼井 友理 | 2008年10月29日 (水) 14時20分

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