女帝エカテリーナの美の遺産-サンクト・ペテルブルグは芸術の都(ロシア)
360年前にピョートル大帝が拓いて以来、常にロシア史の中心で輝いてきた古都サンクト・ペテルブルグ。かの女帝エカテリーナ2世も、この街を愛し、膨大な美術コレクションを収めるため、「エルミタージュ」=「隠れ家」という名の宮殿を建てました。ロシアが世界の大国として君臨していたこのロマノフ王朝の時代は、サンクト・ペテルブルグが燦然と輝き、文化・芸術の都として華麗なる発展を遂げた時代といえます。今回の旅でも、その輝きに触れ、堪能することができました。その一部をご紹介致します。
エルミタージュ美術館といえば、世界四大美術館の一つに数えられる世界屈指の美術館。エカテリーナ2世を始め、ツァーリ(皇帝)達の膨大なコレクションが展示され、収蔵品は300万点を越えます。実際に皇帝が生活していた空間であり、宮殿の宝物の数々にも目を奪われますが、ここを有名にしているのは代々の皇帝達が収集してきた西洋諸国の画家による名画の数々です。ロマノフ朝の皇帝達は、ロシアを近代的なヨーロッパ国家とすることを目指し、そのまなざしを西欧に向け、その文化芸術を大いに取り入れんとしていました。2階にはラファエロやレオナルド・ダ・ヴィンチの貴重なイタリア美術が並びいつもギャラリーが絶えません。また、外国人観光客には、3階にあるルノワールやピカソ、マティスやゴーギャン等々の印象派のコレクションが非常に人気があります。なんだ、印象派なら日本でも素晴らしい展覧会がある…と思われるかもしれません。けれど、日本の展覧会ではいつも大変な人だかりで絵をゆっくり見られなかった…なんて経験はありませんか。ここエルミタージュ美術館は、サンクト・ペテルブルグ最大の見所の一つとして来館者は多いものの、これだけ一堂に会した巨匠の作品の数々でも、常設ですので一時に人が押し寄せるということはありません。少し待てばじゅうぶんに自分のペースで鑑賞でき、しかも日本よりもずっと近い距離で作品に接することのできるところが、私が何より好きな点です。何しろ、追加料金を払えば写真撮影も可能(09年5月15日現在)だなんて、日本ではちょっと考えられない状況ではないでしょうか。
さて、サンクト・ペテルブルグを訪れる当社のツアーでは、バレエ鑑賞を日程に組み込んでいます。ロシアが世界に誇る国民的舞台芸術であるバレエに、本場でぜひ触れていただきたいと思うからです。どの劇場の何の演目にご案内できるかは、その時の上演目により変わるのですが、私が添乗いたしました今回のツアーでは、エルミタージュ劇場での「白鳥の湖」をご覧頂きました。エルミタージュ劇場は、その名の示すとおり、エルミタージュ美術館の一部にある小劇場です。かつて皇帝や貴族達がこの劇場で私的に舞台を楽しんだのですから、内装は華やかで、自分もサロンに招かれたような気分になります。サンクト・ペテルブルグにはこのようないくつもの劇場があり、多くの踊り手がいます。ただ、日本には今や世界各国からの超一流のバレエ団が訪れ、大規模な舞台で公演をすることも多いですので、目の肥えたお客さまには、もしかしたら群舞のレベルなどはご満足頂けないかもしれない…と、実は少々心配していた私でした。しかし、ソリストのレベルは非常に高く、何より、小劇場ならではのダンサーの息遣いまで感じられるこれだけ密な空間でバレエを見られるのは日本では滅多にない機会です。オーケストラとの距離感も非常に近く、劇場全体が一体となった、非常に心躍るひとときでした。バレエ・ファンのお客様にもご満足いただけたようで、添乗員としてとても嬉しかったです。
芸術の都としてのサンクト・ペテルブルグの魅力、ごく一部をご紹介させて頂きましたが、皆様いかがですか?ちょうど現在、渋谷でトレチャコフ美術館(モスクワ)の展覧会を開催中ですし、ロシアの芸術にご興味をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
皇帝達が競うように集め、高めた美の数々を、ごく近い距離感で楽しめるのがロシアの芸術鑑賞の魅力の一つのように思います。まさにベストシーズン到来のロシアを、そんな側面からもお楽しみになってみてください。
(長崎若葉)
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