奇妙?可愛!面白い!! イギリスのロマネスクを巡る旅
イギリスのロマネスク芸術を巡る旅より帰国しました。
ロマネスクというとフランスやスペインが有名ですが、英国にも多くのロマネスクが存在します。
1066年のノルマンコンクエストをきっかけに、イギリスにロマネスクが入ってきました。ノルマン様式と呼ばれるイギリスのロマネスク教会は、アングロ・サクソンが建てたサクソン様式の教会やケルト人の流れを汲む教会の跡に建てられました。その為、大陸のロマネスクとは違った特徴が多くみられ、大変興味深いです。
今回のコースではノーザンブリア地方、ウェルシュボーダーズ地方、コッツウォルズ地方、サウスダウンズ地方、サウスイースト地方を、大聖堂から小さな村の小さな小さな聖堂までロマネスクを求めて北から南へ旅しました。
イギリスではヘンリー8世の宗教改革やその後に続く清教徒革命により、多くの教会建築が壊滅的なダメージを受けました。しかしながら、都市から離れた農村には難を逃れたノルマン・ロマネスク教会が、村人たちの生活に溶け込みながら900年の時を超えて存在しています。今回訪れた教会があるのは、かなり詳しい地図でも名前が載っていないような小さな村が殆どでした。緑の丘がどこまでも連なる農村の道を走る私たちのバスがよほど珍しいのか、村人だけでなく羊や牛までびっくりして振り返ります。バスが通れるぎりぎりの幅しかない道をいくつも通って辿り着いた村の教会はどれも素晴らしく、とても甲乙つけることは出来ませんが、そのなかでも特に面白かったいくつかをご紹介します。
ノーザンブリア地方、ダラムの西に位置する小村エスコーム。東西16メートル、南北たったの4.3メートルという、イギリスでは珍しい、ノルマン以前のアングロ・サクソンの様式を留めた聖堂がのあります。
サクソンの日時計など、かすかに異教の流れを感じさせる素朴な聖堂を、この小さな教会を愛してやまない牧師さんが、丁寧に案内してくれました。深い緑の木々と傾いた墓石に囲まれ、小雨の中にしっとりと佇む、イギリス現存最古の聖堂の姿は息を呑むほどの美しさでした。
ウェルシュボーダーズ地方ではケルトの流れを感じさせる模様や、イギリス独特のユニークな彫刻が溢れる聖堂に沢山出会いました。イアーズリーの「セント・メアリー・マグダレン聖堂」の洗礼盤はその中でも一押しの面白さ。この地域の多くのロマネスク教会を手掛けたヘレフォードシャー派の傑作です。お猪口の形をした大きな洗礼盤にぐるりと施された彫刻に目が釘付け。
「キリストの黄泉降下」のシーンが彫られているのですが、アダムの手を引っ張って全力疾走中のキリストのあまりに力強い姿、引っ張られすぎて宙に浮いているようなアダムの様子はまるで漫画のようです。
キルペックの「セント・メアリー・アンド・デヴィッド聖堂」の摩訶不思議な持ち送りたちも衝撃的でした。
特に犬とウサギの彫刻が施された持ち送りはとても800年以上昔の作品とは思えない奇抜さ。ウサギがちょこんと正座している(膝に手を乗せている)ように見えるのは私だけでしょうか?
持ち送りといえばチチェスターの大聖堂!一般公開ではない、聖堂北翼廊2階の図書室に特別に入れてもらって見た秘密の持ち送りは素晴らしかったです。
教会の増築の為、もともと外に面していたはずの持ち送りが図書室内に隠れてしまったのは今から800年程前のこと。13世紀の古書の古い紙の匂いが漂う、薄暗い図書室にひっそりと隠れていた珠玉のロマネスクとの対面に大興奮でした。
イギリスのロマネスクには彫刻だけではなく、美しい壁画もあります。ハーダムの「セント・ボトルフ聖堂」では壁一面に描かれた壁画に圧倒されました。今まで見たどの壁画よりも足が長いアダムとイヴに見とれ、複雑な気持ちで悩むヨセフのもとを訪れる天使の指先の可愛さに、思わず顔がにやけます。
まだまだ広くは知られていないイギリスのロマネスクですが、はじめて感じる不思議な魅力に溢れていました。南口のポーチに笑いを狙ったとしか思えない彫刻が施されたタンパンがはめられていたり、アーチにはこれでもかというほどギザギザ模様が彫られていたり、柱頭だけではなく柱そのものに模様が彫られていたり・・・。イギリスのロマネスク、是非訪れてみてください。大満足の面白さです。(宮澤詩帆)
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