ゾロアスター教の聖地、ヤズドへ(イラン)
先日、「華麗なるペルシア紀行 8日間」の添乗より戻って参りました。アッという間の8日間ではありましたが、その中にイランの様々な魅力がギュッと凝縮した旅となりました。
シリアのパルミラ、ヨルダンのペトラとともに中東の3Pに数えられるアケメネス朝ペルシアの都ペルセポリス。かつて「世界の半分」とまで謳われたイスファハンの世界遺産のイマーム・広場を中心に広がる華麗で豪華絢爛なイスラム建築群を見学しました。
このイラン二大ハイライトに加え、個人的におすすめなのが、シラーズのハムゼ廟とローズ・モスクことナシル・アル・モルク・モスクです。靴を脱いで入るハムゼ廟の内部は総鏡張りで、まばゆいばかりの別世界。廟内では、コーランを一心に唱える信者の方々の傍らで、腰を下ろしてゆったりとイスラム世界に浸ることができました。そして、小さいながらも薔薇柄のピンクタイルを使った斬新なデザインと午前中の限られた時間のみ出現する美しく幻想的な空間が魅力のローズ・モスク。庭からステンドグラスを抜けて差し込む朝日が、モスク内の床に万華鏡のような鮮やかな光の芸術を描きだす様は息を呑む美しさでした。
そして、今回イランを訪れてみて、改めてイランの歴史・文化の奥深さを感じた場所があります。それは、かつてシルクロードの交易都市として栄え、かの有名なマルコ・ポーロも訪れたオアシス都市ヤズドです。旧市街には日干し煉瓦で作られたササン朝以来の街並みが今なお残り、灼熱の砂漠で暮らす知恵の一つ、風採塔が町の所々にそびえる小道を散策すると、なんだかタイムスリップしたような思いになります。この町は古代アケメネス朝ペルシア以来、イスラム勢力が入ってくるまでの間イランの国教または主要な宗教として君臨していたゾロアスター教の聖地であり、今でも数万人のゾロアスター教徒が暮らしています。ゾロアスター教徒は、火・水・風・土を聖なるものとし、死者を埋葬する際には、穢れた遺骸がこれらに触れることを嫌い、古来より鳥葬を行ってきました。20世紀に入り、鳥葬は禁止されてしまったものの、かつての鳥葬場である「沈黙の塔」が、今なお町のはずれの小高い丘に残っています。
斜面に自然とできた小道を登り、10分ほどかけて「沈黙の塔」の頂上を目指します。ペルセポリスのような壮大な遺跡ではありません。イスファハンのイマーム・モスクのような華麗な装飾が施されているわけでもないのです。けれども、地元ガイドの方が説明してくれました。「私も含め今のイラン人はイスラム教徒だけれど、心の中にはゾロアスター教の精神も息づいているんだよ」と。眼下にヤズドの市街地を望みながら、イラン・ペルシアの持つ悠久の歴史に思いを馳せることができる場所、それが「沈黙の塔」だと思いました。
壮大な古代遺跡にイスラム建築、バザールの活況にとっておきのお土産探し、ペルシア文学に地元の人たちとの触れ合い。様々な表情を見せるイランの魅力をぜひ、体感して下さい!!(田村)
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