十字架の国、リトアニアにて十字架を建てる
先日、バルト三国を極める旅11日間より帰国しました。
リトアニアを旅すると、他の国と比べられないほど多くの十字架を目にします。それは、願いをこめて十字架を建てる習慣があるためです。例えば、旧ソ連時代に戦車が置かれていた街中のロータリーには木製の大きな十字架が建てられています。誰の目にも必ず留まる大きな存在は、二度と決してその時代に戻りたくないというはっきりとした意思、そして、旧ソ連時代の犠牲者に対しての深い冥福の思いをこめて建てられたということです。他にも町の至るところ、それも教会でない場所で十字架を目にします。そんな十字架の多い国で大変印象深かったのは、ご一緒したお客様が十字架の丘で建てた十字架でした。
この方は十字架のアクセサリーを作る職人をされていて、ツアーご参加の最大の目的がこの「十字架の丘」にご自身で作成した作品を建てることでした。その日を楽しみに日本でスーツケースに入るくらいの大きさの十字架を作成し、丘に向かう決行の日に備え大切にお持ちになりました。
私達がリトアニアに到着した日を境に、例年より一足早く冬が訪れたようでした。見渡す限り低木以外は何もない大平原を進む中、突如、何かが堆く積まれたような低い丘が現れます。近づくと、それが十字架であることが分かりますが、そこはまるで十字架で作られた森のようです。サイズも手のひら大のものから2mを超えるものまで。また、装飾も精巧な彫刻が施された華やかなものからシンプルなものまで。その数は、驚くことにリトアニアの人口を凌ぐと言われています。旧ソ連時代に何度も撤去される憂き目に合いましたが、リトアニアの人々は抵抗の証として、何度も何度も十字架を持ち寄り、再び建てたのでした。時代が移り十字架を建てる意味もだいぶ変わりました。現在は、赤ちゃんの洗礼、二人の門出を祝う結婚と人生の記念日、また人々がこの丘を訪れた記念に建てています。
バルト海からの冷たい風を感じながら流行る気持ちを抑え丘に近づきました。早速、お客様の作品を建てる場所探し。十字架の隣接する密集度が高いため丘の奥の方へ入ることが難しいため、入り口付近に決定しました。既に建てられている十字架には、建てた人の名前や平和への祈りの言葉、あるいは願い事が書かれているのですが、控えめなお客様のものには一文字もありません。「私はここに来た証に十字架を建てるだけで満足。名前を残すことなんて考えておりません」と微笑みながらおっしゃいました。きっといろいろな想いがこめられていたに違いありませんが、ご自身の胸に留めていらっしゃいました。その後、建てた記念に十字架と一緒に記念撮影。お客様が建てた木と金属を組み合わせた細身の十字架には、今は既に次に訪れた方が願いをこめてロザリオが掛けられているかもしれません。次回訪れた際に、このステキな十字架を探すのが楽しみです。
(大久保)
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