幸せの発信地、ブータン王国
幸福の王国、ブータンより帰国しました。ヒマラヤ山脈の南斜面に位置するブータンは、北は中国、南はインドという大国に挟まれた小さな王国です。面積は九州くらい、人口は67万人(東京都足立区の人口と同じくらい)のブータンはちょっと変わった国策を取り入れていることで有名です。
まず、入国して目を奪われるのが民族衣装を身に着けた人々の姿。日本でもお正月に振袖、花火大会に浴衣を纏った人々の姿を目にすることは珍しくありません。しかし、ブータンの民族衣装着用率はそんなものではありません。たとえて言うならば、日本のサラリーマンが会社に行くときにスーツを着るように、ブータンの男性たちは「ゴ」とよばれる民族衣装を日常的に着ています。そして女性たちは若い女性から主婦、老婆まで「キラ」と呼ばれる色鮮やかな民族衣装を着ています。大国に挟まれた小国のアイデンティティを保つ為にとられている政策だといわれています。
洋服を知らないわけでも、もちろん手に入らないわけでもないけれども、 あえて民族衣装を身にまとう姿はとても誇り高く、心を打ちます。民族衣装というのはその国民を一番美しく見せる服装なのだ、と実感し、日本人も男は羽織袴、女は振袖が一番魅力的に見える装いなのではないかと思いながら、民族衣装を粋に着こなすブータンの人々を目で追う日々でした。
昨今目覚しい経済成長を遂げるインドと中国に挟まれたブータン。近代化の波に乗ることはそれほど難しくは無いと思われますが、国王の政策で無闇な近代化を避け、今までの暮らしの風景を壊さない発展を遂げています。首都のティンプーですら信号は無く、エレベーターのある高い建物(それでも10階未満)も殆どない。唯一の国際空港があるパロの谷には豊かな田園が広がり、景観を壊す高層建築などは建てないという徹底振り。近代化の波に呑まれ、国としての個性を失うのではなく、軽やかに乗りこなす姿がそこにはありました。
ブータンは資本主義思想に対するアンチテーゼともいえるGNH『国民総幸福量』をスローガンとしているのは以前から知っていましたが、訪れてみて初めてその意味するところを実感しました。資本主義の思想GNPでは、幸福は、持っている財産を欲望で割った指数に比例するという考え方をします。 つまり欲望には果てしが無く、その欲望を満たす為には果てしない経済成長を遂げ無ければなりません。それに対しブータンが提唱しているGNHは分母である欲望を最小限にすることで幸福度を高めるというもの。急激な近代化ばかりを良しとせず、昔ながらの生活を維持し、質素でつつましい生活ではあるけれど、家族が食べていくには最低限困らない自給自足を維持し、赤ん坊から年寄りまで一つの家でお互いに尊重しての暮らしを大切にしているブータンの人々。熱心な仏教徒である彼らは、あたりまえのように「全世界の人々の平和」を祈ります。私利私欲にまみれていないからこそ、国民の多くが、自然に他社の幸福を願えるのだということに深い感銘を受けました。「幸福の国」と称されるブータン、自分たちだけが幸せであるという意味ではなく、「幸福を発信している国」ということなのではないか、と思う旅でした。(宮澤)
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