ナシ族が暮らす街、麗江(中国)
この旅は、世界遺産である麗江古城内の景観に馴染んだ雰囲気の良いホテルに4連泊するというゆったりした日程も魅力の1つです。古城の中心である四方街と呼ばれる広場までは徒歩5分ほどで、三眼井(さんがんせい)と呼ばれる井戸や木氏の館“木府”、瓦屋根の街並みを一望できる獅子山は、全てホテルから徒歩圏内にあり散策にはとても便利なのです。一方でお洒落なカフェや露店もあり、散策の途中にお菓子やお茶で一休みすることも出来ます。古城内にいくつか残る三眼井とは「3つの眼を持つ井戸」という意味で、上流から順に飲み水用・野菜洗い用・洗濯用に四角く区分されており、今でも使われています。実際に私が朝訪れた時には、洗濯をする人やコップを片手に歯磨きをする人、昼ころ再び訪れた時には野菜を洗う人や掃除用のモップを洗う人も見かけました。
中国には55の少数民族が住んでいると言われていますが、麗江はこの地方に多く居住している納西(ナシ)族の街であることでも有名です。納西族の「納」は「黒」を意味しています。これは、麗江が標高2400mの位置にあり紫外線が強く、肌が黒いことに由来しています。特に女性が働き者と言われ、野菜を入れた大きなカゴを背負った民族衣装姿の女性をよく見かけました。女性の民族衣装は、北斗七星を表す丸い飾りのついた「七星羊皮」という背当が特徴です。前で交差した白い紐は、交差している部分で結び目がある人は既婚者、結び目がなく単純に交差している人は未婚を表しています。さらに、注意深く女性の衣装を見てみると、若い女性と年配の女性の衣装には生地の色合いなどの点で若干の違いもありました。伝統的な民族衣装も、現代風に少しずつアレンジされているのかもしれません。観光の途中で四方街を横切ると、家事を終えた納西族の女性20人ほどが腰を下ろして井戸端会議に花を咲かせていました。夜の四方街では、納西族に加え観光客が二重三重にも輪になって、音楽に合わせて踊りを踊っていました。これらは、「○時に集合ね!」とお互いに約束しているわけではなく、いつも何となく集まってくるのだそうです。
そして、とても興味を引く納西族の文化の1つに東巴(トンパ)文字があります。世界で今も使われている唯一の象形文字と言われ、エジプトのヒエログリフよりも細部まで表現されているものが多いです。両者の対照表を見るとそれがよくわかり、例えば「水を飲む」を東巴文字で表すと、水を飲む人間とコップにストローまで描かれています。どれをとっても可愛らしいものばかりで、これを書くのは相当の技術が必要なのだろうと思いましたが、東巴の先生である和世先(わせいせん)さんの筆の運びは、何も躊躇うことなくスムーズなものでした。
今回の旅で出会える少数民族は主に納西族のみですが、雲南省だけでも他に20以上の少数民族が住んでいます。彼らにそれぞれの衣装や習慣などの独特な文化があることを思うと、再び少数民族を訪ねて、ゆったりした時間の流れる雲南の地を訪れてみたいと思わせる旅になりました。(鈴木寛子)
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