針と糸で受け継がれるもの(中国雲南省~北部ベトナム)
先日、「雲南・北部ベトナム少数民族街道 11日間」のコースより帰国しました。
この旅では、中国とベトナムの国境付近に住まう少数民族の村々を訪ねます。国境が引かれたことにより、呼び名こそ違っているものの、特徴的な民族衣装を比較してみれば、そのルーツが同一であることは一目瞭然!という民族が両国に存在しています。しかし、興味深いのは、ルーツが同じで住まう場所もそう遠くない地域だというのに、属する国によって民族性がまるで異なる点です。中国の少数民族は、ベトナム側に比べ「内向的」な印象を受けます。微笑みかけても真顔で応えるのみで、カメラを向けようものならば、あからさまに不快感を示します。現地のガイドによれば、かつての日本人がそう感じていたように、写真を撮られることで寿命が縮んでしまうといったような迷信が少なからず残っているそうです。
一方、ベトナム側の少数民族はというと、私達が滞在したサパという町は元々フランス人によって開拓されたリゾート地ということもあり、現地の人々は良くも悪くも「外国人慣れ」しています。時に、そのアグレッシブな商売根性にうんざりしてしまうこともありますが、愛嬌たっぷりに各国の言葉を操り、外国人を積極的に受け入れつつも、決して自分達のスタイルを崩さない姿勢には清々しさすら感じました。
そんな正反対の性格をもっているような両者の間にも、ひとつだけ共通する反応がありました。それは、女性達がひとつひとつ丁寧に仕上げる民族衣装に感動し、その感動を伝えたときです。彼女達は、約1年かけて自分の衣装を完成させます。私達が訪問した時期は、旧正月前で新年に新しい服をおろそうと、作業もちょうど佳境に入っているところでした。中国の紅頭ヤオ族の村では、私達が近づくと、まるで獲物から子供を守る動物のような警戒の顔を浮かべていた人々も、手にしていた作品に話が及ぶと、ぱっと別人のような笑顔を見せてくれました。また、ベトナム側でも、観光中に仲良くなった赤ザオ族の若いお母さんは、「その服も自分で作ったの?」と尋ねると、商売モードを止め「じゃあ、特別に見せてあげる。」と言って、完成間近の左足部分のそれは見事な刺繍をみせ、「10歳位からお母さんに習って受け継いでいくのよ。」と誇らしげに話してくれました。
中国とベトナム奥地の山岳地帯に住まう、少数民族。お世辞にも裕福とは言えない彼らの暮らしの中には、針と糸で綿々と受け継がれてきた民族の伝統とアイデンティティ、そしてそれらを支えてきた女性達のたくましさを感じることができました。
(弥永 亜実)
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