変わらない営みの気配~地下都市カイマクル(トルコ)
先日、「トルコ周遊とカッパドキア」の旅から帰国しました。好天が続き、道沿いや遺跡には野花が咲き乱れていました。
このツアーで連泊をするカッパドキアへと辿り着くと、なんとも不思議な景色が現れます。奇妙なかたちの岩が折り重なっていて、すべて自然にできたものだと聞かされても、疑いたくなるような個性的な岩々。カッパドキアには独特の自然を生かした洞窟住居が今も数多く残っています。迫害を逃れた初期キリスト教徒たちは、柔らかい岩を掘り進めて、洞窟のなかに住居や信仰の拠点を作り、身を潜めたそうです。世界遺産にも登録されたギョレメ国立公園には、当時の岩窟教会が良い状態で残っています。敵の攻撃に絶えず備えながらも信仰の灯を守り抜いたという人々。岩には美しいフレスコ画が残されていて、岩の中でボウッと浮かび上がる姿は神々しくも素朴さがあり、当時の人々の姿が浮かぶようでした。
今回は、カイマクルという地下都市をほとんど貸し切り状態で見ることができました。地下都市は発掘されていないものも含めて約35も点在しているそうです。当時は、それらが地下で通じていたとも言われています。カイマクルの地下都市は。地下8階深さ約70メートル。柔らかい岩や土であったとしても人の手ですべて掘り進めてられ、台所の換気やオリーブ油の圧搾機、貯水槽や敵襲に備えた罠など、各階のつくりすべてが無駄なく設計されていることに驚かされます。実際に行けるのは地下4階部分までですが、火を焚いた場所に残る黒くなった壁に触れたり、敵襲に備えた狭い通路をしゃがみながら歩くと、当時1万5千人が暮らしたという地下都市の住人の一人になったかのような気持ちになります。ひんやりとした地下の出口から地上からの光を見つけたときは、思わずホッとしましたが、一度も地上の光を臨むことなく地下で一生を遂げた人もいたことと思います。ほの暗い地下都市のなかには、身を寄せあって暮らした痕跡がありありと残っていて、今と変わらない人の営みの気配が多くの人を惹き付けるのかもしれません。(菊池)
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