古代の歴史ロマンと近代のイスラム芸術を楽しむ(イラン)
先日、「華麗なるペルシャ紀行8日間」より帰国しました。 春のイランは野花が咲く美しい季節。中でも古都シラーズは庭園や公園、広場などが数多くあり、街のあちらこちらで鮮やかに咲く花を見かけることが出来ました。シラーズといえば薔薇といわれるように、通常は青いタイルで装飾されることが多いモスクも、この街ではピンク色のタイルに彩られた美しい外観をしている珍しいモスクがあります。
この街のシンボルともなっているモスク「ナシル・アル・モルク・モスク」は全体が薔薇の絵柄が描かれたピンク色のタイルで覆われていて、別名ローズモスクとも呼ばれています。このモスクの一番の見どころは庭に面したサロンで、晴れた日には眩しい太陽の光がステンドグラスを通してサロンの中へ差込み、まるで虹色のような色とりどりの光で溢れます。サロンに一歩足を踏み入れると、その美しい光景に皆様から感嘆の声があがります。写真では見たことがあるという方もここは是非とも実際にご覧いただきたい!というお勧めのモスクです。
華々しい近代のイスラム芸術も素晴らしいのですが、やはり歴史のロマンを感じる古代遺跡の数々も見どころです。シラーズから約1時間半ほどバスを走らせたところには中東の三大遺跡とも称されるペルセポリスもありますが、この辺りにはいくつもの遺跡が残っています。ペルセポリスから北西にさらに足を延ばすと、そこにはアケメネス朝の歴代の王が眠る巨大なお墓「ナクシュ・ロスタム」があります。
高さ100メートルを超える崖のような巨大な岩山の中腹を十字型に彫りこんだ王墓はアケメネス朝の歴代4代の王の墓。すぐ目の前まで降りていくことが出来ますが、下から見上げるとその大きさに驚きます。また、墓の上部にはゾロアスター教の最高神であるアフラマズダのレリーフも描かれています。ペルセポリスを築いたダレイオス1世のお墓以外はお墓の位置について諸説あるようですが、4人の王はダレイオス2世、アルタクセルクセス1世、ダレイオス1世、クセルクセス2世のものとされています。
ダレイオス1世の墓の隣には、馬に乗ったシャプール1世の前に戦に敗れて捕虜となった東ローマ帝国の皇帝ヴァレリアヌスが跪いている大きなレリーフがあり、このレリーフが「ナクシェ・ロスタム」という名前の由来となりました。ナクシュとは「絵」、ロスタムとは「伝説的英雄」のことです。
ナクシュ・ロスタムが作られた時代はちょうどササン朝ペルシアが勢力を拡大して隆盛を極めていた頃。パルティアを滅ぼし、中央アジアからメソポタミアに至るまでの領土を獲得、さらにローマ皇帝を捕らえるという偉業を成し遂げた伝説のヒーローは自分の姿を歴代の王の墓の中央に刻ませたのでしょうか・・・。壮大な遺跡を前にして、かつての大帝国ペルシャの悠久の歴史に思いを馳せてしまいました。歴史を感じる旅をするならやっぱりイランは外せない国のひとつです。(大戸)
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