南チロルで軽やかにブランコ(イタリア)
突然ですが、チロルといって思い浮かぶものといえば何でしょう??
10円のチョコレートや千鳥屋のチロリアン、山高帽やカラフルな刺繍用のテープでしょうか?
それとも、オーストリア・アルプスの可愛らしい村々が思い浮かびますか?
しかし、今回ご紹介しますのはイタリア北部にある「南チロル」と呼ばれる地域です。
先日アルプス・ロマネスクのツアーで、イタリア北部とスイスの一部を旅してきました。
イタリアのロンバルディア州、ピエモンテ州などの湖水地方を巡り、ダヴォス会議で有名なスイスのダヴォスを経て、再びイタリアのトレンティーノ・アルト・アディジェ州へ。
このアルト・アディジェは別名南チロルと呼ばれています。
そう、このアルト・アディジェ地方にあるティロル城が、知る人ぞ知る、「チロル」という地名・地域の発祥の地なのです。
世界大戦の後引かれた国境線の関係で、現在、チロルの北と東はオーストリアに、残りはイタリアに属しています。
日本で目にする「チロル」のほとんどがオーストリアのそれなのでしょうけれど
イタリアの片田舎に残るチロル城(今も丘の上に堂々と立っています!)や周辺の素朴な村々にもまた、かわいらしく優しいチロルの風土が息づいています。
チロル城が見下ろすヴェノスタの谷に建つ家の造りや街並みも、イタリアよりもアルプス以北のヨーロッパのよう。
谷を埋めるリンゴ畑の陰には、ぽつんぽつんと中世のロマネスク様式の教会がたくさん残っています。
チロル城から20キロほどのナトゥルノの聖プロコロ教会もその一つ。
小さな実をつけ始めた6月のリンゴの木陰に、素朴な佇まいの聖堂が見えてきます。
木の扉の先、教会内部の壁には所狭しと中世のフレスコ画がかかれています。
犬に率いられた12頭の牛、ケルトの影響が見られるという優美な天使、そしてなにやらブランコに乗って楽しそうな人物…。
ガイドの話では、迫害を逃れて町を脱出する聖人の姿であって、決してブランコで遊んでいるわけではないのだそう。
以前はダマスカスから逃げる聖パウロといわれていましたが、最近ではこの人は農業や潅漑、家畜の守護者である聖プロコロとする説が有力です。
とはいえ、やっぱり緊迫した場面には見えないのですが。
そうさせるのは彼の穏やかな表情のせいなのでしょうか。
それともチロルの優しい谷を吹く、清清しいリンゴの香りの風のせい?
とっても和やかで爽やかな、6月の旅の思い出です。
(山岸)
>北部イタリアへの旅はこちら
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