カラヴァッジョとローマ探訪(イタリア)
カラヴァッジョ特別展とローマ探訪 8日間』より帰国しました。今回のツアーはなんとローマに6連泊!周遊ツアーでは長くても3日程度の滞在になるローマを思い切り堪能する、大変充実した毎日でした。
ツアー前半は「古代のローマ」にテーマを絞ってローマにある古代の史跡を巡りました。その中でも特に印象的だったのが『旧アッピア街道』のウォーキングです。
ローマ街道の女王と賞されるアッピア街道。通常日本のガイドブックに記されているのは、ローマ南のセバスティアーノ門から出発してチェチーリア・メテッラの墓までのルートですが、今回はこの墓から先のルートを歩いてみました。実はここから先こそが、古代の石畳が多く残る、まさに『これぞローマ街道』を味わえる場所なのです。車通りも少なく(大型車は通行禁止)安心してウォーキングを楽しめるのも魅力です。細かい石が敷き詰められた部分は近年に舗装された部分ですが、時折現れる大きな石畳、これこそが2300年もの歳月を超えて今に残る『アッピアの石畳』なのです。ハンニバル、スキピオ、カエサル・・・古代ローマを生きた多くの英雄達が歩いた、その同じ石畳の上を歩く。歴史好きには堪らない、浪漫溢れるウォーキングでした。街道沿いは春の花が風に揺れ、古代の貴族や解放奴隷の墓が半分崩れて、物によってはかなり立派な形を保って立ち並びます。悪名高い皇帝ネロの家庭教師だったセネカの墓もあります。
今回の旅の最大のテーマは、今年没後400年を記念してローマで開催されるカラヴァッジョ特別展を、多摩美術大学教授の松浦弘明先生と共に巡ることでした。クィリナーレ宮美術館で行われた特別展にはイタリアだけではなく、海外に点在する作品も集められており、初期から晩年に至るまでのカラヴァッジョを一度に堪能できるという夢のような機会でした。特別展以外にも「サンタ・マリア・デル・ポポロ教会」「サンルイジ・ディ・フランチェージ聖堂」「ボルゲーゼ美術館」等、カラヴァッジョの作品を所蔵する教会や美術館を先生と一緒に巡り、カラヴァッジョ三昧な2日間。バロック黎明期のイタリアで短くも壮絶な人生を駆け抜けたカラヴァッジョの魂に触れるような濃密な時間でした。
作品鑑賞はどれも印象的で甲乙付けられませんが、全てを語ると話が尽きなくなってしまうので、ここでは一つサンタゴスティーノ教会での鑑賞について書きたいと思います。
午前中、まだひと気もまばらな聖堂で、仄かな光に照らされたカラヴァッジョ中期の作品『ロレートの聖母』を鑑賞しました。
カラヴァッジョの絵の特徴として、画面の背景を斜めに横切る光の線がありますが、その光が実際の光(教会の窓から差し込む光)と重なって、見ている側にまるで絵の中の人物が実際に目の前にいるかのような錯覚を与える効果を生み出すものがあります。代表的なのはサンルイジ・ディ・フランチェージ聖堂の『マタイの招命』ですが、この日見た『ロレートの聖母』は照明の灯りと教会の窓から射し込む光が淡く絵に注ぎ、本当に目の前に聖母マリアが降り立ったような美しさでした。
そして、この作品を描いた頃のカラヴァッジョがどういう環境にあったか、この絵の中で彼が試みようとしたと思われることは何か、注目すべきポイントはどこかなど、多岐にわたる松浦先生のお話を聞くことで、傑作をより深く面白く鑑賞し、非常に濃密で贅沢な時間をすごすことができました。
あっという間に過ぎたローマの滞在、6連泊してもまだまだ行ってみたいところが沢山あります。周遊で楽しむイタリアも素敵ですが、一都市滞在でじっくり見ることの面白さを実感する旅でした。(宮澤)
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