2010年6月29日 (火)

サンティアゴ巡礼路は世界に通ず(スペイン)

ブレア近郊で

先日、「聖地サンティアゴへのラスト100㎞を歩く 14日間」のツアーより帰国しました。
ツアーの中で‘100㎞を歩く’と言うと、何だか大変そうなイメージですが、実際に参加して歩いてみると、思ったほどの大変さは無く、景色を楽しみながら歩くことができました。

今回の旅では、巡礼証明書を手にするのも大事な目的のひとつ。
サンティアゴまで徒歩または馬で最低100㎞以上、自転車ならば200㎞以上の巡礼を行ってはじめて、証明書は発行されることになっています。
そこでこのツアーでは最低条件の100㎞を歩いて証明書をもらおう、ということなのです。
その100㎞という距離は通常大きなバックパックを背負った巡礼者達が4日間でこなす行程ですが、我々はゆっくりと景色も楽しみながら8日間かけて歩きます。しかも大きな荷物はバスで運びますので、一日ごとの区間は気分的にもゆとりを持って歩くことのできる、ちょうど良い距離でした。

巡礼路歩きはブレアという小さな村からスタートしました。我々以外にも最短距離の100㎞ポイントから歩こうという人達が多く、スペイン人らしき学生たちと一緒に賑やかな出発となりました。
朝のひんやりした空気を胸一杯吸い込んで最初の一歩を踏み出します。
周辺を見渡すと起伏に富んだ丘陵地帯には緑鮮やかな牧草地が広がり、のんびりと牛が草を食んでいます。遥か遠くの丘上には風力発電の風車が軽快に回っています。のどかな農道、ほのかな草の香りの漂う土道を歩いて、時には小川や水溜りを飛び越え、苔むした樫の森の中を抜けてゆきます。森の中の土道は適度な弾力があり、気づかぬうちに足取りも軽くなってゆきます。
森を抜けると、ちょうど膝の辺りまで生長した特産のとうもろこしやじゃがいも畑が見えてきました。風にたなびく小麦は稲穂もだいぶ大きくなって、後は夏の収穫の季節を待つばかり。
ペドロウソ近郊で 農家が僅か3軒ほどの小さな集落が多く点在する、北スペイン・ガリシア地方。農家はいずれもふぞろいの石を積み上げて造った手作り感溢れる家屋、納屋が殆どです。恐らく何十年、何百年も経ったであろう、長い年月を感じさせる鄙びた家屋に今でも人が住み続け、大切に受け継がれて使われていることには、いたく感心しました。

今年は数年おきにやってくる聖ヤコブ年(聖ヤコブは聖地サンティアゴの守護聖人)ということもあり、例年よりも格段に巡礼者の数が多く、様々な巡礼者と触れ合う機会に恵まれました。

アルスーア~ペドロウソ

他の巡礼者を追い越し追い越される時にはお互いに、「ブエン・カミーノ!」(よい巡礼を!気をつけて。という意味)と声を掛け合います。
犬を連れて歩くピクニック気分の家族連れや遠いブラジルからやってきたド派手な服装のオバチャン、筋肉モリモリのマッチョマン、しばらく歩いただけでビール片手に盛り上がるセビーヤからの青年たち、愛用のギターを担ぎ先を急ぐフランス人青年、どんな時もしっかり手を握り合う熱々カップル、そしてヘルメットを被る自転車集団もいれば美しい毛並みの馬で駆け抜けてゆく人々もいます。
一口に巡礼者と言っても、歩くペースもスタイルも当人次第。
他の巡礼者との、ふとした触れ合いを通してさまざまな人々が、それぞれの想いを抱いて巡礼路を歩いていることを実感できたような気がします。
「全く異なる場所からやってきた人々が皆、同じ道を歩き、同じ目的地に向って歩いている・・・。」
今回のツアーで私にとって最も印象的だったのは、全ての巡礼者を包み込む、この不思議な一体感でした。
そして最後に聖地サンティアゴの大聖堂に辿り着き、ようやく巡礼証明書を手にした時の、何ものにも代え難い、すがすがしい達成感でした。
「路上で出合った巡礼者たちも無事にサンティアゴに辿り着けただろうか。」
巡礼証明書を手にした後、ふとそんなことが気になりました。

聖地サンティアゴを目指す巡礼は、ゴールが目的ではないような気がします。
もしかしたら、人と人が出会う、人生の交差路でもあるのかもしれません。
(上田)

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