カラヴァッジョの生涯を追う!
今回は天才画家が幼少期を過ごしたミラノ近郊のカラヴァッジョ村も訪問。
中々通常のツアーでは訪れることのない小さな村ですが、15世紀に農婦の前に聖母が顕現したことから、巡礼地となっており、大変壮麗な聖母教会が建っています。聖母が現れた場所には泉が湧き、現在もこの聖水を求めて多くの人が訪れるそうです。
時期的に、幼いカラヴァッジョはこの教会の建築が進められていく様子を目の当たりにしているはずで、6/7(月)の記事で宮澤さんが紹介している「ロレートの聖母」は、ロレートの聖家族の家飛来伝説と、自らの故郷に残る聖母伝説を重ね合わせて題材のヒントにしたとも言われています。私達がこの教会を訪れた際にも巡礼のグループが静謐感に満ちた祈りの歌を捧げていました。
カラヴァッジョが最盛期を過ごし、殺人を犯したローマから逃れ辿り着いたナポリでは、カラヴァッジョの到着を待ちわびていたかのように、早速、祭壇画の依頼が舞い込んできます。
ナポリの下町に位置するピオ・モンテ・ミゼリコルディア聖堂は、そこに教会があると知らなければ素通りしてしまいそうな場所でしたが、入り口の扉を開けてすぐさま、正面に掲げられたカラヴァッジョの「慈悲の七行」に吸い込まれていきました。祭壇画の下半分にひしめき合うように描かれた人々、それを上から見守る聖母子の姿が、ナポリの下町で、窓辺から顔を覗かせて町の喧騒を見下ろす母子のように見え、ナポリでこの絵を観賞する価値を実感しました。
画家の晩年期の作品で強く印象に残った作品が二つあります。一つはマルタの大聖堂にある「聖ヨハネの斬首」。カラヴァッジョはマルタ騎士団に入団することを願い、その許しを得る為にこの絵を描いたとされています。画家の力強い意思がこの絵から伝わってきました。もう一つはシチリア・シラクーサの「聖ルチアの埋葬」です。先程の「聖ヨハネの斬首」とは対照的に、ぼんやりとした色合い。この絵はめでたく騎士団に入団したものの、揉め事を起こしてしまいマルタから逃げ出したカラヴァッジョが逃走資金を得る為に急いで
描いたという事情がみてとれました。晩年、画家が抱いていた絶望感がじわじわと溢れ出てくるようでした。
カラヴァッジョの辿った道を追うように進んだ今回のツアー。作品が描かれた背景を実際の場所で確認しながら観賞を楽しむ贅沢に酔いしれた12日間となりました。(足立)
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