不屈の信仰心とチベット人の素顔(中国)
最近の聖都ラサは北京や上海、成都といった大都市とを結ぶ青海チベット鉄道が開通した為に、人の往来が容易になり、標高3600メートルの僻地であったラサも商店のネオン煌く賑やかな町に変貌しつつあります。その一方で商売の苦手なチベット人の姿は町の中心から少なくなり、今では旧市街や寺の周辺でチベット人巡礼者の姿を見かけるのみとなりました。すれ違うチベット人たちにはどこと無く悲哀が漂い、ふとした瞬間に哀しそうな表情を見せることがあります。もともとそのような顔立ちの人々なのかも知れません。考え過ぎかも知れませんが、チベット人を見ていると、どうしても抑圧されている哀しい歴史を感じてしまいます。
今回のツアーではチベット人にとって年に一度の大祭、「雪頓節(しょとんせつ)」を見学する機会がありました。遠路はるばるバスを乗り継いで、各地から大勢のチベット人が集まり、山の斜面の狭い会場はチベット人でいっぱいになりました。夜明けと共にお釈迦様が描かれた、縦横30メートルはあろうかという強大なタンカが斜面に開帳されると、普段はあまり喜怒哀楽の表情を見せず、物静かなチベット人たちは珍しく嬉しそうです。お互い満面の笑顔を浮かべ、開帳と共に魂を解放するかのような叫び声に似た歓声が沸き上がりました。開帳が終わると、「コルラ」と言って寺の周囲を時計周りに歩くのが慣わしなのですが、狭い小道に大勢の参拝者が我先に殺到するので、押し合いへし合い、怒号や悲鳴が飛び交う大混乱となります。ここでもまた、普段は大人しいチベット人たちが神様に少しでも近づこうと人の波を必死の形相で掻き分けてゆく、以外な一面を垣間見ました。これも篤い信仰心の表れなのでしょう。また、そんな中でも若者が年配者を気遣い、手を取って助けたりお互いに譲り合う光景が至るところで見られました。
神様へのひたむきな信仰心。そして年長者を敬い、他者を思いやる心。
残念ながら彼らチベットの国は事実上、地図からは無くなってしまいました。しかしその一方で、今では多くの国で失われつつある、最も大事なものが、このチベットではしっかりと受け継がれていることを実感しました。
「チベット頑張れ!」
訪れる度に心の中でチベットを応援せずにはいられません。(上田)
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