ペーターのホテル(エジプト)
先日、「エジプトの絶景、白・黒砂漠とシナイ山」の旅より帰国しました。今回は、ちょっと特殊なエジプト・ツアーのこぼれ話。ちょっぴり不思議な砂漠ホテルの話をしましょう。
そのホテルはエジプトの西方砂漠のバハレイヤ・オアシスという所にあります。エジプトと言うと、アスワンのアブシンベル大神殿やルクソールの王家の谷、ギザの大ピラミッドやスフィンクスなど、ナイル河流域の古代エジプトの遺跡ばかりが注目されてきたように思いますが、実は今、エジプト好きのみならず、世界の砂漠や絶景好きの旅行者に静かなブームとなっているのが、この西方砂漠なのです。この砂漠を一躍有名にしたのが、白砂漠・黒砂漠と呼ばれる二つの砂漠です。黒砂漠は、太古の火山活動により形成され、真っ黒な岩石に覆われた大地と山が広がります。一方の白砂漠もまた、はるか昔に海の底だったために石灰岩の層が形成され、地上に現れた後は気の遠くなるような年月をかけて風砂に侵食され、今では真っ白な奇岩が乱立する異世界の風景を生み出しています。バハレイヤ・オアシスはこの二つの砂漠への観光拠点という訳なのです。
カイロから真っ直ぐな砂漠道路をバスで走ること約5時間、ついにバハレイヤ・オアシスに到着です。メインストリートから未舗装の脇道にそれ、ゆっくりゆっくり走ります。この脇道の名前を「ペーター通り」と言い、今夜泊まるインターナショナル・ホットスプリング・ホテルのご主人の名前なのです。大型バスでデコボコ道を何とか抜けてホテルに辿り着くと、ペーターさんがとびきりの笑顔と「いらっしゃいませ~」という流暢な日本語で迎えてくれました。そう、ペーターさんは日本語も話すのです。それもそのはず、出迎えてくれたペーターさんの横には奥さんのみはるさん。なんと、このホテルの女将さんは日本人なのです。
みはるさんは、写真と砂漠が大好きで、このオアシスにホテルなど一つもない頃から通い、写真を撮っていたそうです。そしてバハレイヤで最も快適なこのホテルを創業したのは、ペーターさんのお母さん。ペーターさんも手伝うようになり、道もない荒地にまず道をつくり、ホテルの建設資材を運び、何もなかった砂漠に木々を植えたそうです。10年以上経った今では、オアシスの中でもこのホテルの一角だけが、一際緑豊かで目を引きます。夕暮れ時、ホテルの裏山である通称イングリッシュ・マウンテンに登れば、夕陽に照らし出されたオアシスの前景と、このホテルがいかに特別なものなのかをはっきりと見ることができました。
夕食時。全てのテーブルへ一言二言挨拶して回るペーターさん。シーズン開きを記念して、特別にベドウィン音楽と踊りを用意して下さったみはるさん。ついつい、音楽と雰囲気に釣られて踊りだすお客様方。
翌朝、ロビーであるお客様から、こんなお話がございました。「散歩に出たら少し迷ってしまったわ。ホテルの名前を言っても全く通じないの。」。するとみはるさんがやって来て、「この辺りの人はみんなこのホテルのことをペーターのホテルと呼ぶんですよ。」と教えて下さいました。ペーターの通りにペーターのホテル。本当にこのホテルはオアシスの人々に愛されているのですね。
ドイツからも日本からもとっても遠いエジプトの、それも砂漠のオアシスで、ドイツ人のご主人と日本人の女将さんが造り出す素朴で暖かいおもてなしの心は、旅の中でもとびきり居心地良い空間と、気持ちの良い時間を与えてくれました。(田村)
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