ペルシアンスマイルとの出会い
先日、「魅惑のペルシャ4都市周遊」の旅から帰国しました。イランと聞くと、最近は経済制裁や核問題など、政治的なイメージが先行することが多く、実際にどのような人々が暮らしているのか想像することが難しいかもしれません。今回は9日間の旅のなかで、ヤズド、イスファハン、シラーズ、テヘランと歴史的にとても重要な都市を巡るなかで、現地の人々とのたくさんの出会いに恵まれました。
晩夏のイラン。日中の陽射しはまだ厳しかったですが、からっとして風も心地よく、日本の酷暑よりも過ごしやすかったです。さて、イランという国はその昔ペルシャと呼ばれていました。今もイランの人々はイスラム教であっても、「自分たちはアラブではない。ペルシャ人という誇りを持っています」と語る人も少なくありませんでした。アラブ人を皮肉るジョークまであるそうです。イランは厳格なイスラムの国という印象もあります。イスラムのなかでも少数派のシーア派であり、アリーの子孫しか後継者として認めないという血統主義のため、実像がつかみにくいところもあります。イランのモスクは、どこへ行っても建築も装飾も細やかで本当に美しいです。イスファハンのシャイフ・ロトフォラー・モスクは、時間によって天井に孔雀が浮かび上がり、それは一瞬まわりの音も消えるくらいボーっと見入ってしまうほど。さすがカナール(地下水路)を世界で最初に生み出したと言われるペルシャ人!緻密に計算された建築や装飾を見ていると、時間を忘れてしまいます。そんなモスクに、なぜか掲げられているホメイニ師の巨大な写真。「イスラムって偶像崇拝禁止ですよね?」と思わずお客さまもびっくり。ガイドさんも一瞬言葉をつまらせてましたが、「シーア派だからではないですが…イラン人はオリジナルなイスラム教持ってますから」と笑いながら語っていました。「ほんとは、偶像崇拝はだめですけどね」と小さな声で付け足して。
かつて国の名がペルシアだったころ、その国教はゾロアスター教でした。別名拝火教とも呼ばれているため、火のイメージが強いのですが、実際の内容を聞くと、日本の神道にも通じるところがありました。火・土・水・風、大自然を神聖なものとして敬い、なかでも火と土を重んじていたそうです。そしてゾロアスターが啓示を受けたアフラ・マズダという神を信じていました。(日本の自動車会社もこの神の名から取ったのだそうです)キリスト教よりも早く生まれたこの宗教は、その後イランから世界各地に広まりました。「ゾロアスター教の信徒が今も大切にしている3つのことがあります。善い考え、善い言葉、善い行い。この3つを守った人は死後天国へ召され、悪い行いをした者は死後審判によって地獄へ行く」だから、信徒がまだ暮らすヤズドは勤勉な人が多く離婚率も低いそう。「ゾロアスター教で説いた教えは特別なことじゃなくて、人が生きていくなかで、これを守っていたらみんな幸せに暮らせるというものですよ。イスラム教徒もキリスト教徒も仏教徒も…みんな同じではないかと本当は思っています」独り言のように語ったガイドの言葉がとても心に残りました。
各地で出会ったイランの人々は皆少し照れ屋であたたかく、少しずつ近づいてきて「ジャポネ?」と聞かれて頷くと、本当にうれしそうに「一緒に写って」と言われました。観光中も何度も撮影タイムがあり、皆さま一体何枚の家族写真に写ったのでしょう。どこへ行っても笑顔ばかりでした。
テレビや新聞で語られるイランの政治的なイメージは、世界に広がって上塗りされていくばかりです。普段目にしていて分かっているようで、つかめないこと。実際に訪れたイランの土地や出会った人々との交流を通して、体感することの必要と大切さを改めて感じる旅となりました。(菊池)
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