ブルガリア人の心の故郷・リラの僧院~秋の訪れを感じて~
先日、秋真っ盛り『ルーマニア・ブルガリア物語16日間』のツアーより帰国いたしました。
ヨーロッパの秋は、黄金の季節と呼ばれています。それは、木々が黄色に色づく黄葉のためです。
到着した頃は、所々黄色くなりかけているといったところでしたが、ツアーも終盤に入ってくるとかなり秋は深まり、山全体が色づき黄金の季節と呼ぶにふさわしい景色が広がっていました。一年の中でも、この季節はそれほど気温も低くなく、また観光客でごった返すこともないので、観光するにはとてもいい時季と言えます。
特に、ツアー最後に訪れたリラの僧院のあるリラ山はとても素晴しく色づいていました。
リラの僧院は首都ソフィアから南に約65kmのところにあります。リラ山に入ると、両側をトンネルのように覆う木々が、黄色、または所々に赤く色づき、まるで黄金のトンネルのような道をバスは進んでいきます。
ブルガリアは、約500年間オスマントルコに支配をされていたと言う歴史があります。その当時、首都のソフィア初め、イスラム教の礼拝所であるモスクが多く作られ、多くの正教の教会は閉鎖に追い込まれました。しかし、リラの僧院だけは別でした。
リラの僧院は10世紀に作られた修道院で、リラ山に囲まれた標高1147mの所にひっそりと隠れるようにして建っています。この場所は、昔からギリシャのアトス山やエルサレムへの巡礼の道への途中であり、宿泊施設として多くの人々が訪れていました。その為、オスマントルコは、この僧院を壊すのではなく、納税の義務を課し、それにより宗教活動を許可したのです。リラの僧院のそうした背景から、精神的、そして文化的なブルガリア人のアイデンティティーを確認する場所として存在していました。そしてそれは現在も変わることなく存在しています。
さて、そのリラの僧院ですが、敷地内には、聖堂、フレリヨの塔、そして僧房があります。聖堂は、外側、内側の壁一面フレスコで飾られており、とても色鮮やかに人々に聖書の教えを伝えています。
聖堂の中に入ると、外とは違う空気が流れます。中は少し薄暗く、正教徒がお祈りの時に使う蝋燭の独特な匂いがします。とても厳かで、でも温かい穏やかな時間が流れます。
中央の祭壇前には、イコンを飾る聖壁イコノスタシスがあります。人々は、イコンに向かい、お祈りをし、十字を切って口づけをします。
外に出ると、ピンと張り詰めたような爽やかで新鮮な空気に、自然と背筋がまっすぐになりました。改めて、ブルガリア人の聖地であるということを実感できた瞬間でした。
ヨーロッパの黄金の季節。落ち葉の絨毯の上を歩いたり、木々のトンネルの下を歩いたり、いつもよりちょっぴりのんびりとした、豪華な気分に浸れるこの季節には、またこの場所に戻って来たくなってしまいます。(津波みのり)
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