スペインのタコはなぜやわらかい?
先日、「北スペイン・ポルトガル紀行10日間」より帰国致しました。
北スペインでのハイライトは、ガリシア地方のサンティアゴ・デ・コンポステラです。
ここは、9世紀にキリストの12人の弟子の一人、大ヤコブの遺骸が発見されたとされ、エルサレム、ヴァチカンと並ぶキリスト教の三大聖地の一つとなっています。
ヤコブの遺骸が発見された日とされる7月25日が日曜だったことから、その日が同様に日曜となる日が聖年とされます。
そして今年2010年はその聖年にあたるのです!聖年にお参りをすると通常の年の何倍もご利益があると言われ、沢山の人が巡礼に訪れます。現地のガイドさんに聞いたら、今年は例年の8倍の人がこの地を訪れているそうです。聖年の目玉は免罪の門とボタフメイロ(大香炉)です。免罪の門は聖年のみ開く大聖堂の門で、それをくぐれば今までの罪が帳消しになるという素晴らしき門です。
これは聖年の前の年の大晦日の夜に外から特別な小槌で「コンコン」と叩くのを合図に開けられ、ちょうど一年後に次の聖年まで閉じられます。
また、ボタフメイロ(大香炉)はミサの最後に天井から吊らしたロープに繋がれ、聖堂の中で大きく振られます。この大香炉は聖年でなくても毎年の7月25日のアポストル祭と呼ばれる祭りでも振られますが、聖年には大きなミサが多いため、振られることが多いです。
私達が見学をした日は、偶然にも日本人の宗教団体がミサに参加しており、代表の方がミサの最中に日本語で言葉を述べていました。そしてミサの終わりに大香炉が振られました。ダイナミックに大聖堂の中を揺れる大香炉と、それをロープでひっぱって動かす聖職者の方々の姿は圧巻でした。
さて、大祭年のためいつもより長めの前置きでしたが、本日は旅の楽しみの一つ、食事の話を致しましょう。
北スペインの西端にあるガリシア地方は大西洋に面しているため、伝統料理であるガリシア料理には沢山の種類の海産物が使われます。サンティアゴ巡礼路のシンボルでもあるホタテ貝、メルルーサという白身魚、ムール貝、細長いマテ貝、亀の手と呼ばれるエボシ貝、カニ、手長エビ、ロブスターなどあり日本人の口によく合います。
特に私が美味しいと思うのがタコのガリシア風です。
ぶつ切りの茹でたタコに塩とニンニクとパプリカのみのシンプルな味付けで出されます。
これが美味しくないわけがありません。
普通、欧米の多くの国の方はタコを食べる文化がありません。
また、イスラムやユダヤの宗教はタコを食べることが禁じられています。
しかし、スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャそして日本はタコを好んで食します。かくいう私もタコが大好きです。
添乗でモロッコへ行った時にずっと頭から離れなかったイメージはスーパーのお刺身売り場に売られている「モロッコ産」とシールの付いたタコ。イスラムの国のため、食事には絶対に出てきません。食べたくても食べられないジレンマをまさかモロッコで味わうとは思いませんでした。日本に帰り、まず初めに食べたことは言うまでもありません。
そんなタコ好きな私ですが、スペインやポルトガルで出会うタコには本当に驚かせられます。というのは、タコが非常に柔らかいのです。その柔らかさは箸でちぎれるくらい。
私以上にタコ好きなお客様がいらして、「自分は歯が弱くなってもタコを一生食べたい。だから何としてもなぜこんなに柔らかく調理できるのか知りたい」とおっしゃいました。
こんな切な願いはどうしても叶えて差し上げたいと思うのが人の心。
忙しそうなスタッフを呼び止め、聞き出しました。店員が何と答えたかは後ほど……。
なぜ柔らかいのかは諸説あるようです。
説1、昔ヨーロッパでペストが流行ったときに「食べ物は全てよく煮る様に」というお触れが出てタコもよく煮たが、いかんせん煮すぎたタコは硬すぎて美味しくない、ということで編み出された技が「玉ねぎと煮る」というものだった。
説2、水から揚げたタコは専用の洗濯機に入れて回し、柔らかくしている。
説3、スペイン・ポルトガルのシェフはタコの筋を上手に切ることができ、柔らかくできる。
さて、店員の回答は……
「これは本当は秘密なんだけど、タコを獲ってから1ヵ月間冷凍するんだよ。」
皆様、どれが本当だと思いますか?
(名倉)
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