再生する八百万の神々(ニュージーランド)
先日、「ニュージーランド物語 16日間」のツアーから帰国致しました。弊社ツアーの中でツアータイトルに「物語」とあるコースでは周遊型のコースとなっており、一度でその国の見所を余すことなく見て回れるコースとなっています。
ニュージーランドは大きく分けて南島、北島に分ける事ができます。南島では白い雪を被ったサザンアルプスの峰の下でトレッキングをしたりニュージーランドを代表する景勝地ミルフォードサウンドでのクルーズ、クライストチャーチやダニーデンなどの都市ではイギリス、スコットランドの植民文化に触れたり、北島では火山活動地帯と先住民族マオリ文化を肌で感じる事ができます。
通常ですと15日間のツアーですが、今回は「神木特別プログラム」という事で一泊増えた16日間のツアーとなりました。
突然ですが、ニュージーランドを地図で見た時に日本に似てると思った事はありませんか?北島が北海道で南島が本州の形をしていると思いませんか?
島国であるという以外にも似ているところがいくつかあるんです。四季があるという事。火山や温泉、地熱地帯があるという事。今でも深い原生林があるという事。
実は今回の「神木特別プログラム」は日本とニュージーランドの意外な類似性がテーマとなっています。
屋久島の縄文杉とニュージーランドのカウリの木(マキ科の針葉樹)が昨年の4月に姉妹木となった事から始まります。ご存知の通り、縄文杉は日本を代表する巨木であり、日本固有の八百万の神が宿るとされ、地元の人々に「神の木」として崇められ愛されてきました。一方、カウリの木も1000年以上の歳月をかけて樹高30~50mにまでまっすぐに成長します。樹高を伸ばすために、下の葉を自ら落とす習性があります。先住民のマオリの人々もカウリの木に精霊や聖なる力が宿ると考えており、その中でも特に国内最大のカウリの木である「タネ・マフタ」は森の神とされ、マオリの神話では「天地を創造し、人々に光をもたらした存在」と位置づけられています。「歴史的、文化的な巨木や古代木が姉妹木となることで、その木が根ざす国や地域同士の文化理解や自然環境保全の意識向上を目指すもの」がこのプロジェクトの目的となります。
現在残るカウリの木はかつての4%にまで激減してしまいました。かつてニュージーラン
ドの原生林はシダやコケの中にカウリの木々が直立していました。今カウリの木が自生するワイポウア森林保護区には松の木がたくさん植えられています。これは18世紀以降ヨーロッパ人が入植し、柔軟性、耐久性があり材木としての価値が高かったカウリの木は造船、建築、家具、カウリの樹液は琥珀となり、伐採の対象となってしまったからです。カウリの木は保護林となりましたが、そのときには既に96%の木々が伐採されていました。それを案じた政府が松の木を植林し、今ではワイポウア森林保護区はカウリの森ではなく、松の森となってしまいました、とこの地でカウリの成長を見守るガイドの岡田愛さんは言います。我々も「神の木」の森を再生させるべく、カウリの赤ちゃん(樹齢5年)を植樹してきました。たった一本の植樹ですが、この一本がかつての原生林に戻る手助けをするのだと思うと感慨深いものがあります。このカウリの赤ちゃんが大きくなり、仲間とともに静かな森で生き続けられたら・・・と思うと植樹の作業も自然と手が動きます。大きくなった姿を見られるのは1000年後ですが、我々の世代だけでなく次世代にも自信と誇りを持って残すことができると思います。(篠原由宇馬)
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