~仏へと繋がる3国の魅力~
「知られざるアジアの秘境、ブータン・バングラデシュ・ダージリン 16日間」より帰国しました。旅は東インドの大都市カルカッタから始まり、バングラデシュを南から北上し、紅茶の名産地ダージリンへと入ります。英国時代の雰囲気を感じた後は南のブータンに数日の滞在、そしてまたインドのカルカッタへ戻るという3カ国にまたがる旅です。
歴史的につながりのある国々であるが故に、宗教的な関係も面白く残る3カ国です。現在はそれぞれに全く違う宗教を国教として定めていますが、実は…古の時代、「仏教」という点で共通しています。インドはご存知のように「仏教誕生の地」であります。バングラデシュは「インドでの仏教衰退後、仏教文化開花の地」、ブータンは「今なお、仏と社会が一体となる仏教の地」であります。各国で仏教にまつわる遺跡や場面を目にしましたので、いくつかご紹介致します。
まずは、インド。カルカッタの国立博物館は一見の価値あり!ガンダーラ美術の仏像たちが展示されており、これが数百年も前に作られたのかと思うと驚きのものばかり。そんな中、ガイドさんが言った一言がとても印象深く残ります。「この仏像の表情、現代の技術で似たようなものは出来るかもしれないが…決して同じ表情は作り出すことは出来ないでしょう。美術とは芸術家の心を表しているのですから。」…確かに!その仏像の表情たるや何とも穏やかで優しい顔をしていました。残念ながら館内は撮影禁止だったので、ここではお披露目できませんが、そのお顔は訪れた人の心に深く刻まれる事と思います。雰囲気は違えど、同じインドのダージリンでは、ヒマラヤに近いせいかどこかネパールに似たものを感じます。というのも英国時代、ネパールから多くの移民がこのダージリンにやってきたのです。ヒンドゥー教徒が多い中、チベット仏教も息づいている場所ですので、カラフルなチベット風の僧院もうまく雰囲気に馴染んではいますが、何となく不思議な気持ちになる場所です。晴天の早朝に訪れた「グーム僧院」の中に入ると、5ⅿもの弥勒菩薩が迎えてくれ、2010年の幕引きにはとても有難きものとなりました。
そしてお次はバングラデシュです。バングラデシュの国教は今やイスラム教で、朝はコーランと共に目覚める毎日。バゲルハットのモスクで聞いた「アザーン」や「コーラン」の声はしばらく耳から離れることのないくらい美しいものでした。そんなイスラム一色となったバングラデシュですが、ここにはインド亜大陸最大の仏教遺跡「ソマプーラ・ヴィハーラ」があります。
広大な敷地にかつては177もの僧院があり、仏舎利にはテラコッタ(素焼き)装飾の数々を見ることが出来ます。この建築は後々、ミャンマーやカンボジアの仏教建築に影響を与えたとも言われています。ここの博物館にも様々な仏像が展示されており、「仏教」だけではなくヒンドゥー教の神の姿を目にしました(バングラデシュは仏教からヒンドゥー教、そしてイスラム教へと変化)。インドでは、三大神の中でもシヴァ神信仰が強く感じられますが、ここではヴィシュヌ神の信仰が多かったようで、ヴィシュヌ神の像をよく見かけました。
そして最後の国、ブータンへと場所は移ります。この国での印象は「仏への信仰深き心」でした。ブータンの20県にはそれぞれにゾンと呼ばれる、政治と宗教が共存する建物があり、観光では主にそのゾンの中にある僧院へとご案内します。
やはりチベット仏教、礼拝の地で目にするのは五体倒地をして仏に祈る人の姿です。大きく広げて手を合わせるのですが、それは「生きとし生ける全てのもの」に祈りを捧げるという意味です。全てのものが幸せであるように、だけれども自分と他人の幸せを比べたりはせず、自分のおかれた環境で自分が幸せである事に努めるのが彼らの信仰心でもあります。チョルテンというお経の書かれた旗が風にたなびき、小さなマニ車を持った老人が僧院の周りを回りながら祈りを捧げ、そしてまたある人は全身全霊を込めて祈りを捧げていました。最後に訪れたブータン仏教の聖地「タクツァン僧院」はまさにスピリチュアルな雰囲気を持つ場所でした。
ブータン・バングラデシュ・ダージリンの3カ国の旅は、現在に息づく文化の魅力を感じると共に、仏教の辿った道を知ることが出来た旅となり、ある意味「修行」をしてきたような旅となりました。(内野)
バングラデシュ・ブータンへの旅はこちら
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