南北を訪問してこそ分かる、キプロス島の魅力(キプロス)
ひとつは、ギリシア系住民が暮らし、ギリシャの田舎町のような雰囲気が広がる南の地域。ここでは、ギリシア正教が信仰され、ギリシア語が話されています。また、透明度の高い青が美しい地中海沿いには、ローマの古代遺跡が点在し、かつてのローマの繁栄を伺い知ることが出来ます。
そしてもうひとつは、トルコ系の住民が暮らす北の地域で、こちらは一変してイスラム系社会が広がっています。かつて教会として使われていた壮大なゴシック建築も、現在は内部のみが改造されてモスクとして利用され、教会の鐘楼から礼拝のアザーンが鳴り響く不思議な光景に出会います。水タバコを興じ、トルキッシュコーヒーを片手に仲間と団欒する人々の姿もよく見かけました。キプロスを旅すると、このように、ひとつの島国でありながら、全く異なった言語・習慣を持つ2つの民族が混在していることを実感します。
現在、キプロスは、東西80kmに渡って、緩衝地帯「グリーンライン」が引かれ、南北に2分されている状態です。その南側にギリシア系が、北側にトルコ系が生活しています。「グリーンライン」の幅は平均して7kmほどありますが、首都ニコシアのある部分はその幅が最も細く、数10cmしかありません。
かつては、北キプロスへの旅行は制限されていましたが、少しずつ状況が緩和され、今では旅行者も北キプロスへ行けるようになりました。キプロスの魅力は、グリーンラインを越えて南北を旅行してこそ伺える、両民族間の関係を感じ取ることだと思います。
今も尚、内戦時に追い出されたまま廃墟と化した村が点在しているのを見れば、両国間の憎しみや衝突を感じ、胸が締め付けられる思いがしました。一方、首都ニコシアにある最も幅の狭いグリーンラインを自由に往来している人々の姿を見れば、比較的自由に両地域間の交流があることを実感し、私達が想像していた以上に友好的な交流が行われているようにも感じました。
「グリーンライン」という名称は、かつてイギリス人が地図を作る時、両地域間の分断線を引く際に、トルコのシンボルカラーである赤と、ギリシアのシンボルカラーである青の中間色である緑が利用されたことに由来するそうです。そして、「緑はまた、平和の象徴でもあります。私たちは、一日も早くこのグリーンラインが取り除かれて、両民族間の友好が深まり、民族同士の亀裂がなくなることを望んでいるのです。」と教えてくれたガイドさんの言葉が何よりも深く印象に残りました。
百聞は一見に如かず。小国でありながら、大変複雑な民族問題を抱えるキプロス島の素顔に触れる旅となりました。(兼井)
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