ヒンドゥー教の聖地、ブロモ山に暮らすテングル族(インドネシア)
先日、「コモドドラゴン探索と、聖なるブロモ山の夜明けを体験する旅」のツアーより帰国致しました。
インドネシアは、現在、国民の90%以上がイスラム教を信仰していますが、ジャワ島の東部に位置するブロモ山の麓には、ヒンドゥー教を信仰するテングル族が生活しています。
インドネシアには、ボロブドゥールやプナンバナンなど、ジャワ島中部の遺跡がよく知られています。それらの壮大な遺跡が建造されたのは、9世紀から10世紀にかけてのこと。その後、ムラピ山が噴火し、王国は滅亡したとされています。火山の被害は人が住めない状態になってしまうほど甚大で、王国の都はその後東部に移り、ヒンドゥー教の王国が栄えました。そのため、あまり注目されませんが、ジャワ島東部にも、興味深い遺跡が数多く残っています。
16世紀になってイスラム勢力が台頭すると、自らの信仰を捨て切れないヒンドゥー教徒が、イスラム教徒から逃れるために、ブロモ山に定住し始めたとされています。彼らは、現在はテングル族と呼ばれ、国語となっているジャワ語のほかに、独自の言語を話し、独自の文化や習慣が根付いています。
テングル族に関して、ガイドさんが興味深い言い伝えを教えてくれました。昔、ロロ・アンテンという少女が、ジョコ・セゲルと結婚しましたが、子供が生まれず、悩んでいました。そこで、ブロモ山の火の神様にお祈りしたところ、なんと、25人もの子供を授かったのです。現在のテングル族は、2人の子供の子孫と信じられ、ロロ・アンテンの「テン」と、ジョコ・セゲルの「ゲル」をとって、テンゲル=テングル族となったというわけです。
言い伝えには続きがあって、火の神様は子供を授ける代わりに、一番下の子供を生贄と して捧げるようにと二人に約束させました。しかし、子供の命を惜しんだ2人は、末っ子を隠し、生贄に出すことを拒んでしまいました。すると、ブロモ山の火の神様は突然火を噴き、怒りをあらわにしたのです。驚いた末っ子は、自ら火口に飛び込みました。そして、自分が犠牲になる代わりに、毎年、ブロモ山に捧げ物をする儀式をするようにと、村人に約束させたのです。この出来事は、現在まで言い伝えられ、年に一度、満月の夜に、盛大なお祭りが行われ、果物やお米、肉などの捧げものをもった多くの人々で賑わうのだそうです。現在は、昨年からの噴火活動が活発なため、火口には近づけない状態が続いています。人々はこうした噴火が起こる度に、火の神様がお怒りになったと恐れ、さまざまなものを捧げて鎮静を祈るのです。
テングル族は、東南アジア系の顔つきとは異なり、チベット やネパールなど、山岳地帯の人々に近い顔つきです。亜熱帯地帯のインドネシアですが、ブロモ山は高山に位置するために涼しく、キャベツやたまねぎ、にんじんなど、野菜栽培が盛んです。ちょうど村のマーケットでは、たくさんの野菜が並べられ、活気に溢れていました。今回はあいにく、悪天候のため、山々を臨むことは出来ませんでしたが、テングル族との交流は印象深い体験となりました。(兼井)
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コメント
こんにちは、今年はブロモ山に登ってみたいと思って検索していたところ、こちらのブログにたどり着きました。
いきなりで申し訳ないのですが、質問です。
ブロモ山は昨年に噴火して灰が降りかかっているかと思うのですが、すでに渡航可能な状況なのでしょうか?
投稿: takako | 2011年6月 1日 (水) 13時03分
takako様
お問合せありがとうございます。
昨年の噴火により、ブロモ山の火口にはまだ近づくことが出来ず、依然登山は出来ない状況が続いています。
現在も、定期的に噴火活動が起こっているようです。
従いまして、しばらくは、ブロモ山観光は、プナンジャカン展望台からの朝日見学ツアーのみとなるかと思います。
どうぞよろしくお願い致します。
投稿: 兼井 | 2011年6月 1日 (水) 23時47分