紙一枚通さない!美しき石組み建築の魅力(ペルー)
ご存知の通りペルーは南半球に位置しているため日本とは季節が逆で、私たちが訪れた5月上旬はちょうど冬に入り始めたところです。しかし冬といえどもここは南米。日中は25℃くらいまで上がります。ちょうど乾季に入り始めたところということもあり、湿気がなくからっとしていてとても過ごしやすいのです。ツアー中は澄み渡った青空に白い雲がぽっかり浮かぶペルーらしいお天気が続き、心も晴れやかになりました。緑生い茂る遺跡には花も鮮やかに咲き誇り、特にマチュピチュで見たランは色鮮やかでとても綺麗でした。さんさんと降り注ぐ太陽の下、世界遺産マチュピチュをはじめ、永遠のミステリーと言われるナスカの地上絵や、3800メートルの高地に位置するチチカカ湖の観光など、ペルーの珠玉の都市を周って来ました。
ペルーには保存状態の良い古代インカの遺跡が今も残っており、それが観光客を惹きつけてやまない魅力のひとつになっていますが、遺跡のほかにも多くの見所があります。標高が高いエリアでは、雪を被った5000メートル級のアンデスの山々が見られたり、アマゾンに続く広大な河が見られたりと自然の魅力も尽きません。
そんな魅力あふれるペルーでも私が特に印象に残ったのは、インカ時代の遺跡で見られ る素晴らしい“石組み”の技術。大きな岩を切り、その石と石とのずれをうまく組み合わせ正確なバランスで配置させた石造りの建物は現在でも当時のままの姿を残し、その美しさに思わず「おお…」とため息が漏れます。中でも標高3400メートに位置するインカの古都クスコには、町中に多くの石組み建築が残され時間をかけてゆっくり見たい風景が広がっています。ぴったりと組み合わされた石と石の間にはかみそりの刃さえ通さないとも言われます。クスコ出身のガイドさんは「1ドル札さえ通しません!」と自信満々に言っていたので実際に私たちも試してみたのですが、本当に紙一枚でさえも通せないほど隙間なく組み合わされており、現在のようにコンピューターなどで計算してから機械を使って石を切るということが不可能だった時代に、このように正確に石同士を組み合わせて強固な建築物を作ることができたということに、本当に驚かされます。クスコは、インカ帝国の首都で聖なる町として繁栄を誇っていた場所であり、高い能力を持った技術者たち が多く集まった場所でした。それがこの町が現在も美しい姿をとどめている理由なのかもしれませんが、16世紀後半、スペインの支配が始まると、クスコの町には今まで造られていたような石組みではなくレンガの建物が次々と町を覆っていったのでした。しかし、インカの技術はやはり一歩上を行っていました。クスコはその時代何度も地震に見舞われているのですが、地震でも姿を留めたのはインカの石組み建築だけだったそうです。完璧に組み合わされた石と石がお互いに支え合い、土台となりクスコの町を守ったのでした。その話を聞いて、先人たちの知恵の結晶であった石組みの素晴らしさに恐れ入りました。見た目の美しさはもちろん、そういった理由もあった石組み建築に、私はすっかり惚れ込んでしまいました。
日本でも、お寺などによく使われている釘を一本も使わない木造建築や、涼を取るための 簾など、先人の知恵が生かされて今に生きる技術が多く残されていますが、普段それが当たり前になっていて、どういう理由で生まれたものなのかを忘れてしまいがちのように思います。よく考えてみると、私たちの周りにあるものも、誰かの知恵が結集して造られたものばかりです。その価値を見失ってしまってはもったいないと今回の旅を通じて感じました。
今現在、節電ということで例年より暑い夏を過ごす方も多くいらっしゃると思いますが、電気を使わなくても涼める方法は意外とたくさんあります。まずは私自身も、風鈴を買って気持ちからでも涼しさを取ろうかなと思います。(奥谷)
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