中世ヨーロッパの生活が息づく国、ルーマニア
まず訪れたのはフォークロアの宝庫ルーマニア。ルーマニアと言えば共産主義のチャウシェスクを思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが共産主義の暗い影を残しているのかと思ったら大間違いです。例えば「チャウシェスクの野望の象徴」とされる国民の館。建築物としてペンタゴンに次いで世界で第2番目の大きさを誇るこの建物は部屋数が3000以上もあり、すべての部屋に電気をつけるとルーマニア全土がが停電してしまうなど、様々な噂が耐えないそうです。又、建築資材のほとんどがルーマニア中から調達されたものだと言われています。そしてルーマニア中の鉱山を掘りつくして大理石を採掘し、修道女や修道士も絨毯やカーテン作りにかり出されました。国民が貧困に喘ぐなか、総工費16億ドルをかけて完成した国民の館。非難を受け、毛嫌いされても不思議ではない遺産と思いきや、中を案内してくれたガイドは「この建物はルーマニアの資源を使ってすべてがルーマニア人によって造られた、まさに国民の館なのです。この建設に携わったルーマニア人とその偉業を誇りに思っています。」とツアーを締めくくり、ルーマニア人の前向きな性格をここで初めて感じることになりました。
又、街を少し離れると民族衣装を着て馬車に乗る人に出会ったりと、まるで中世ヨーロッパにタイムスリップしたようでした。今回はチャウシェスクの改造計画の手も届かなかったルーマニア北部のマラムレシュ地方のボティザ村を訪れました。昔から魔よけの役割をする樫の木でできた大きな門を立てた家々、日曜日の礼拝から戻る民族衣装を着た人々などを車窓から眺めながら到着した、小さな村ボティザ村。民族衣装をまとった村人達の音楽演奏で出迎えられました。まるで絵本の中のようなかわいい民族衣装を着た人々に温かく出迎えられ、なぜか故郷に帰ってきたような懐かしさを憶えました。民家の中庭に通され、そこでご昼食をお召し上がりいただきました。そして中庭ではフォークロアショーが始まりました。ルーマニアの民族衣装と言えば、白いブラウスにカラフルなスカートですが、マラムレシュ地方の衣装はレースのフリルが袖についているのが特徴的です。下は4歳の子供からおばあちゃんまで、歌やダンスを披露してくれました。子供たちはこの日ために練習したのか、少し恥ずかしそうに私たちの顔をチラチラ伺いながら踊っていました。そしてルーマニアの軽快な音楽はやがて食事も忘れ、気づけば皆様も村の人たちの輪に入って踊っていました。お食事のあとも、日本からの折り紙やおもちゃで一緒に遊んだりとして交流を深めました。最初は緊張していた子供もやがて笑顔になり、日本のおもちゃに夢中でした。
お別れの時はあっという間にやってきてしまいましたが、たった2時間ほどを一緒に過した村の人の印象は脳裏に焼きついています。ローマ帝国の影響を受け、バルカンの国で唯一ラテン系の民族だと言われているルーマニアの人々。ヨーロッパに唯一残る中世のままの町々でであった底抜けに明るい人たち。ルーマニアの印象ががらりと変わる旅になりました。(丸谷)
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