2011年8月 1日 (月)

【共通テーマデー】わたしの中のヒロイン~ダリットの女王マヤワティ

タージマハルインドの街角で見た巨大な看板一面に描かれた丸顔のおばさん、映画のヒロインにしてはちょっと?!
・・・そこで地元のインド人に聞くとそれは選挙のポスターだと判明。
彼女こそ豪腕の女性政治家マヤワティ・クマリ氏、ウッタル・プラディシュ州の首相です。ヒロインというより豪胆な女傑と表したほうが似つかわしいですが、彼女の力強い生き様は人目を引くものがあります。

人口1億4千万人、インドの約6分の1が集まるウッタル・プラディシュ州は、ネルーなど歴代国家首相を多く輩出する政治的中心地。またガンジス川が流れる宗教的に大切な土地でもあります。
私たち外国人にとっては、白亜のタージ・マハルや聖地ベナレス、釈尊入滅の地クシナガルなどで知られ、訪れたことのある方も多いでしょう。このウッタル・プラディシュ州の現在の州首相マヤワティ女史はなんとダリットなのです。
ダリットとはサンスクリット語で「抑圧されている人々」の意味で、不可触民の自称です。かつてマハトマ・ガンディーは「ハリジャン(神の子)」と称しましたが、これは今やむしろ差別的意味合いを含むとされるようです。

洗濯の様子インドといえばカースト制度。僧侶バラモン5%、貴族クシャトリア7%、商人バイシャ3%、奴隷層シュードラ約60%、さらにその下に不可触民ダリットが約25%とされています。ダリットは皮革業、屠畜業、清掃人、洗濯人など不浄とされる職業に就き、差別と貧困に苦しんでいるのはご承知のとおりです。聖地ベナレスを訪れたら、ガンジス川で洗濯をしている人々を見かけるでしょう。彼らは長時間の重労働ですが、得られる賃金は僅かだそうです。

燃料

特に糞尿を扱う清掃人はダリットの中でも最も不浄とされ、糞壷を頭に載せ、便所を渡り歩いて一生を終えます。インドの下町を歩くと、民家の軒先に牛糞を手でこね、家庭用燃料を作っている風景に出会うこともあるでしょう。素手で糞尿に触れるこの人々は疫病に真っ先にやられてしまいます。共用の井戸から水を汲むことを許されず、穢れの存在として視界に入ることさえ許されず、暴行や殺人があっても黙殺されてしまいます。

マヤワティ女史はデリー郊外のダリットの家に生まれました。
教育を重視する両親のもと学業に専念し、優秀な成績で教師になりましたが、露骨なカースト差別は容赦なかったようです。さらに女性という事で二重の差別に苦しんできました。何の後ろ盾もなく、血と汗を流し、自らの力を恃みに戦い続けたマヤワティ氏は、雄弁さを武器に政治家として身を立て、今や鉄血女首相として恐れられるほど!村落のインフラ改善など政策を次々と打ち出しました。特にダリット救済・優遇政策に力を入れ、公職の優先採用枠を設けるなど、“不浄な”職業からの解放を推し進めています。町や村はどんどんきれいになりましたが、そのやり方は独裁的とも言われ、目を見張るような荒業に驚きと賞賛をうけながらも、同時に強い反発や批判を巻き起こし、まるで台風のような豪胆な政治家です。

マヤワティ女史は頑丈な体格で、50歳代になった今も独身。ショートカット、肌黒い丸顔で周囲を睥睨しながら、がらがらのだみ声で吼えるように熱弁をふるう姿は大迫力です。インド・ドリームを実現した彼女への低カースト層の支持は根強く、カリスマ性抜群のマヤワティ女性首相の人気は絶大!一方で選挙でのばら撒き、自らの銅像設置や豪邸での私生活などへの悪評もてんこ盛り。そんな批判をものともせず、次は中央政権掌握を目指しているとの風評もあり、さすがは鉄の女首相、二重のハンデを乗り切っただけあって肝が太いです。悪女とされるのかカーストと戦った政治家とされるのかの評価は後世に委ねるとして、とにかくその生き様は注目に値します。

マヤワティ女史は、良くも悪くも非常に人間味溢れる生身の女性であり、忌み嫌われ蔑まれた最悪の環境で苦しみ、努力し、不屈の精神で闘い続けたその姿に希望を見出すダリットの人々は多いのではないでしょうか。インド最強の女との異名をとるマヤワティ氏の今後の活躍が気になります。
(山崎)

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【共通テーマデー「わたしの中のヒロイン」】
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