初夏の田園風景と名画の旅（フランス）

先日、フランスの添乗から帰国しました。
今回は南フランスのニースから始まって、スペインとの国境に近いピレネー山麓を巡り、ロワールの古城、モンサンミッシェルをはじめブルターニュとノルマンディー地方の景勝地を巡りパリで終わる21日間の旅です。

今回の旅では、フランス各地の美しい田園風景を見て、改めて「美しい国フランス」を実感しました。

南仏ではちょうど紫色のラベンダーが満開の季節を迎えていました。ラベンダーの栽培で知られるセナンク修道院では、眼下に広がるラベンダー畑が見えた途端、バスの車内から「ウワーッッ！」という歓声が起こりました。また、南仏から少し北上したラングドック地方ではあたり一面が満開のひまわり畑で黄色に染まり、周辺 一帯が明るい雰囲気に一変したかのようです。ワインの名産地ボルドー周辺は鮮やかな新緑の葡萄畑が果てしなく広がっています。
このように満開の花々やグングン伸びる新緑は生命のエネ ルギーに満ち溢れ、見ているだけの私達も不思議と元気になってくるようです。
フランスゆかりの画家達も、この初夏の生命力溢れる、美しい田園風景を見て触発され、創作意欲がモリモリと沸いてきたのかも知れません。今回の旅ではこの季節に描いたと思われる名作の風景に出会いました。

アルルの旧市街のフォールム広場ではゴッホが「夜のカフェテラス」という作品を描いています。星が瞬く濃紺色の空の下、柔らかな光に包まれたカフェを描いた作品ですが、そのカフェは今も朝から晩までテラス席は出入りが絶えません。日が沈み、空が暗闇に包まれる直前の僅かな間に、空は濃紺色へと変わります。黄色の光に照らされるカフェのテラス席と濃紺色の空のコントラストはまさにゴッホが描いた作品そのままの景色でした。空の色が変わってしまうまでの、ほんの僅かな時間。その場にいた誰もが何かにとりつかれたようにじっと見入り続け、全く言葉も出ないほどの美しい瞬間でした。

また北フランスのジヴェルニーという小さな村にはモネが晩年を過ごした家と庭園が残されています。この庭園にはモネが自ら配置を決めた柳や紅葉などの植物、太鼓橋、そして睡蓮の池があります。モネはこの睡蓮の浮かぶ池の景色を、連作「睡蓮」として何点も描きました。まるで鏡のような水 面に映る柳と白雲、そして青空。ここを訪れる人々は皆、モネの作品と同じアングルを探して、カメラを撮ったり、静かな風景に見入っていました。

ふと、私達は名画と同じ風景に遭遇して感動しているのではなく、僅かな一瞬の間に現れた美しい風景そのものに心を動かされたのではと感じました。
そして誰が見ても美しいと感じる、この一瞬の風景を巨匠達は追い続けたのかも知れません。（上田）

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