粛々したスペイン人
先日、ユーラシア旅行社の「スペイン歴史物語 15日間」の旅から帰国しました。
4月上旬に出発したこのコース、今年はセヴィ-リャでセマナ・サンタ「聖週間」をご案内 するコースでした。セマナ・サンタとは、カトリックでは3月下旬~4月上旬、イエスの復活を祝う復活祭前の1週間の事を言います。
スペインはお祭りのない日はない、といわれるほど色々な地域でお祭りを行っておりますが、特にこのセマナ・サンタは大事なお祭りといわれています。簡単に言うと、17世紀頃、スペインは国統一の要として宗教を用いた歴史暦背景もあって、熱心なカトリックの国でした。エルサレムへ巡礼に行った貴族が街中の巡礼(悲しみの道というもの)をみてそれをセヴィーリャで模した事が始まりといわれています。キリストの受難や慈悲、聖母マリアの悲しみを表現した彫像を乗せたパソと呼ばれる山車とそれに付き従う信者、そして楽隊が町をパレードするというものですが、そのためお祭りといっても、とても粛々と厳かに行われます。
街にはたくさんの教会があるのですが、その教会や地域で構成されたコフィラディアという組織がパソをそれぞれ持っています。各教会の持つパソは、大聖堂までゆっくりと運ばれ、そして再びもとの教会へ戻っていきます。このゆっくり進むスピードは1時間に大体100m.行くか否か。金銀に飾られた豪奢なパソはマリア様のものキリストのもの、それぞれ2,000-3000kg.あるといわれていますから、その重さにも進むゆっくりさにもびっくりです。
このパソ、実は男の人たちが40人ほど中に入って担いでいるのですが、布に隠され、彼らの姿を見ることは叶いません。しかし、この運び手に選ばれることは大変名誉なことなのだとか。パソがとまり、歌声と音楽が響き始めると、パソはゆったりと左右に揺れ始めます。ゆっくりな動きなので、上にいるマリア様やキリストがまるで自発的に動いているように、一瞬錯覚してしまいそうです。
パソにノックを三回、すると音楽が止みパソがゆっくりと動き出しました。私たちが運び手の男たちを見ることが出来ないように、男たちも自分の進む先をみることは出来ません。何回も行った練習とノックの合図を頼りに暗闇の中、ゆっくりと歩を進めているのです。
一つのポイントに多くの観光客さ地元のスペイン人が鈴なりになってパソを見守ります。普段は明るく騒がしいスペイン人という印象が強いですがこのときばかりは誰もが声を潜めて、聖なるパソを見守ります。・・・がやっぱりスペイン人とでも言いましょうか、厳粛な中に微笑ましさが入り込みます。パソに付き従う白い三角の帽子で顔を覆った信者にねぎらいのキャンディーを配っている女性もましたし、5歳くらいの子がすっぽりと白い頭巾を被って、親に手を引かれながらパレードに参加している微笑ましい姿にカメラを向けるおじいちゃん、なんてシーンもありました。
そして、最後のパソを見送って我々のそばに上半身裸の男の人が右肩を真っ赤にして、汗を拭きながら歩いていきました。最初のほうのパソを担いでいた男性でした。皆に肩をたたかれ、ねぎらいの言葉を受けながら彼はとても明るいはれやかな笑顔でした。
パレードが去ったあと、近所のバルは立ち寄りました。そこに普段はない、「トリーハ」といわれるあっまーいフレンチトーストのようなお菓子が売られていました。これは日本で言う なら、5月5日に食べる柏もちみたいな感じでしょうか?セマナ・サンタの時期に食べるお菓子です。甘い甘いトリーハをつまみ、活気を取り戻した町を歩きながら思いました。普段の明るく陽気でちょっと適当なスペイン人というイメージが強く、宗教のイメージから離れがちですが、スペインはカトリックの国なんだなぁと。
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