2012年6月11日 (月)

埋もれたままの遺跡を歩く (マケドニア・ギリシャ)

先日、「古代エグナティア街道を往く 11日間」のツアーから帰国致しました。


今回はアルバニアのデュレスから、山間のマケドニアを通り、エーゲ海に面したギリシャ、そして黒海の入口イスタンブールへと続く古代エグナティア街道沿いにローマの史跡を中心に巡ってきました。古代から本国ローマとオリエント(ギリシャやエジプト、黒海やペルシャ方面)を結ぶ幹線路として石畳が1200㎞に渡って整備され、その後街道沿いの要所には宿場町などが発展してゆきました。また、このエグナティア街道は英雄達が辿った道でもあります。


同じようなルートで東方遠征へと旅立ったアレクサンドロス大王をはじめ、ドゥラキウム近郊(現アルバニア)ではカエサルとポンペイウスが激戦を交え、街道上のフィリッピ遺跡(ギリシャ)近郊ではカエサル亡き後の復讐に燃えたオクタビアヌス、アントニウスの連合軍とブルータス、カシウスが戦っています。

このエグナティア街道沿いの遺跡の特徴は、その殆どが半ば草木に覆われ、土に埋もれた状態にあることです。
その為、まるで掘り出し途中のような遺跡を歩くことができるのです。
エグナティア街道上の4カ国は20世紀初めまで政治的な混乱があり、加えて資金不足もあって各地の遺跡には未だ手が付けられていない部分が多く残っています。

キレイに整備、復元されて、往時の姿が想像し易い遺跡もいいですが、個人的には野原に石材が散乱したまま、草木がぼうぼうに好き勝手に生えたままの荒れ果てた遺跡の中を、石組みを跨ぎ、石材につまずき、草木に足を取られながら歩くことに遺跡巡りの楽さを感じます。


右の写真はマケドニアのヘラクレス遺跡です。Hercules_ruin

紀元前4世紀頃に古代マケドニア王国のフィリッポス2世(アレクサンドロスの父)が築いた町が後に宿場町となり、ローマ時代は往来する人々で賑わっていました。発掘されているのは市域の中心部のみで、大部分の遺跡は未だ土の中に眠ったまま。古代ギリシャ文字の刻まれた古の石柱と初夏を迎えて生命力に満ち溢れた新緑。この対照的な組み合わせがとても絵になります。今後の発掘で何がでてくるか、まだ誰にも分かりません。遺跡を歩いていると何だかワクワクした気分になってきます。

Filippiruinまた、左の写真はフィリピ遺跡(ギリシャ)です。

ここも紀元前4世紀の古代マケドニア、ローマと続く歴史があり、現在は後期ローマ時代のバジリカ跡をはじめとしてローマ時代の町の痕跡を見ることができます。写真でご覧頂いている場所は、かつての中心部であったフォールム(石畳の長方形広場を中心に四方にアーケード、商店が所狭しと軒を連ねていた場所)。古代はこのフォールムも行き交う人々や商店の賑わいで活気があったに違いありません。今はそのフォールム周辺のみ発掘されており、初夏の新緑に真っ赤なポピーと野花の黄色が浮き立ちます。無造作に転がる石材、フォ-ルムの床を覆っていた石版の隙間からは重い石を押し退けるようにして緑の雑草が力強く伸びています。このフィリピ遺跡も発掘されているのは中心部の僅かな区域のみで、他に住居地区を始め、墓地、浴場など人々の暮らしていた痕跡が残っているはずです。

荒れ果てた遺跡を歩くのが楽しいのはもしかしたら、まだ誰も知らない、未知の部分への期待感があるからかも知れません。

半ば土に埋もれたエグナティア街道の遺跡はどこも街の喧騒からかけ離れた静寂な時間に包まれています。

古から脈々と続いてきた生命と文明のサイクル、時代と文明の移り変わり、現在に至るまでの長い時間をひしひしと実感した旅でした。(上田)

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コメント

旅行中は、大変お世話になりました。
今回の旅は、アルバニアで少しパラついたものの「聖人(あだ名)」のおかげか、天候に恵まれ、古代遺跡を満喫できました。
私にとっては、2009年に企画されてから思い立ち、3年かけての参加でしたので、下調べも十分のはずでした。
しかし実際に現地を見てみると、新しい発見と疑問が続出して、旅行記を書きながら、別なコースでもう一度行こうかななどと思っている次第です。
観光ずれしていなく、ワインやビールも比較的安いので、お気に入りの地域です。

上田さんは、よくご存じで質問に的確に答えていたのが印象に残ります。
日本には、あまりよく知られていない場所ですし、遠い古代のことですから、普段から関心がないと、的確な解答は難しいと思います。
イスタンブールでの自由時間には、これまでの添乗員さんでは行かない色々な場所を案内していただき、大変お得な旅行でした。

満足した旅行であったことをお伝えするとともに、感謝申し上げます。

投稿: 山田 | 2012年6月26日 (火) 11時24分

山田様
この度はご参加ありがとうございました。ご旅行をお楽しみ頂けたとお伺いし、私としても嬉しい限りです。
山田様が非常にお詳しいので、私自身ももっと学ばなければと反省しております。
アルバニアやマケドニアは本当に素朴で、また行きたい場所ですね。2ヶ国だけの旅もありますので、是非またご検討下さい。

投稿: 上田 | 2012年6月26日 (火) 16時13分

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