モザイク天国、チュニジアへ
先日、ユーラシア旅行社の「チュニジア・サハラ浪漫紀行 11日間」のツアーより帰国しました。アラブの春の発端となったジャスミン革命から約1年半、町中では、気に留めなければ革命が起こっていたことなど感じられません。見た目の変化といえば、ベン・アリ元大統領の肖像画が一切なくなったことと、町中の「ベン・アリ広場」が「1月14日広場」と名前を変えていたことでしょうか。
チュニジアには自然・歴史遺産の見所がたくさんあり、それらは革命中でも大切に守られ、魅力は今も健在です。中でも有名なのがモザイク芸術。首都チュニスのバルドー博物館には、ローマ時代の発掘品が所狭しと展示されており、その規模は世界最大級といわれます。数年前から修復・増築作業が続いていましたが、先月ついに終了!今回は、8月1日よりグランドオープンとなった博物館を堪能することができました。
入口ではまず靴カバーを装着。以前はなかったシステムですが、その理由はモザイク展示室に入ると分かりました。壁だけでなく、床一面にも所狭しとモザイクが展示されているのです。モザイクの最盛期とされる2~4世紀頃は、住宅の床を絨毯のように彩るものだったそうですので、これが本来の姿、というわけです。
この時代のモザイクは、一粒の石のサイズがより小さくなり、色彩も豊富になりました。そのため、陰影やグラデーションが施され、モザイクを一歩離れて見るとまるで絵画のよう。ですが、テーマはギリシャ神話や当時の生活スタイルなので、絵画のように見方が難しいことはありません。何も分からなくても理解できる、それがモザイクの魅力なのだと思います。
ワナを仕掛けて犬が獲物を追い込む狩猟、舟から網を投げて魚を獲る漁業のモザイクは、約2千年の間、そのスタイルが変わらないことを教えてくれます。四季をイメージしたモザイクには春の花・夏の小麦・秋の葡萄・冬のオリーブが描かれ、豊かな大地であったことが感じられます。当時の人気興行だった剣闘士同志の戦い、ボクシングの元祖とされるスポーツの様子、貴族が召使いに世話をさせる裕福な生活の様子等々は、今にも動き出しそうな躍動感があり、飽きがくることはありませんでした。
2千年前は単なる装飾品の1つだったモザイクも、今となっては貴重な資料の1つ。モザイクを通して、ローマ世界のイロハが少し見えたような気がします。ひょっとしたら遠い未来、私達の生活の中にある何気ないものが、今の時代を伝える貴重なものとなることがあるかもしれません。(江間)
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