ダージリンの蒸気機関車は明治の新橋~横浜を駆け抜けた機関車と兄弟
先日、インドから帰国しました。世界遺産のダージリン・ヒマラヤ鉄道に乗ってきました。インドは鉄道王国です。アジアで初めて鉄道が開通したのはインドです。総延長62000km超で世界第5位、年間旅客輸送量は8380億人km・年間旅客輸送人数6億5200万人で世界第2位、年間貨物輸送量5510億トンkm、年間貨物輸送トン7億9400万トンで共に世界第4位、広大な国土にたくさんの人や貨物がぎっしり走っています。
紅茶で有名なダージリンへ向かうダージリン・ヒマラヤ鉄道は1999年11月にオーストリアのゼメリング鉄道についで世界で2番目の世界遺産に登録された鉄道です。山岳鉄道で且つ道路沿いを走ること考慮し、軌間(線路の幅)はとても狭く610mmでこれは日本の立山砂防工事専用軌道と同じ幅になります。ちなみに日本のJR在来線1067mm、 は新幹線1435mm、インドは多くの路線で1676mmですので狭さ際立ちます。(写真はダージリン・ヒマラヤ鉄道起点のシリグリ付近。他の線と併走しています。)
機関車は常にダージリン向き、即ちダージリン行きの場合はボイラーを前に、グーム行きの場合はボイラーが後ろを向きバックしているように見えます。走行は3名、機関士(ドライバー)、投炭士(ファイアーマン)、砂撒士(サンドマン)。ファイアーマンはキャビンではなく、ボイラー所にいます。そうです。石炭はボイラーの両サイドにあるのです。サンドマンは適宜線路に砂を撒きます。ファイアーマンは勾配を予想し、石炭を釜にくべ、ドライバーは勾配で車輪が空転しないように慎重に蒸気圧を調整し、サンドマンがカーブや勾配にあわせて砂を撒く。人類初の動力蒸気機関を絶妙なチームワークで操る。窓からは煙は勿論のこと砂やらそして火の粉まで容赦なく飛び込んでくる。それでも、とても楽しく皆、笑顔で喚声を上げっぱなし!
世界遺産の選考基準のひとつ、「人類の歴史上重要な時代を例証する(中略)技術の集積、」この鉄道が世界遺産となった理由の一つに、100年以上も前に生産された蒸気機関車が未だに現役で動いているという点があります。一番古い機関車で1892年製造、生まれは英国、スコットランド。グラスゴーのシャープ&スチュワート社で製造されました。今回の列車を牽引した写真の791号は1914年にノース・ブリティッシュ・ロコモティブ社によって製造されたものです。プレートには1963年と2004年にリビルト=レストア(分解再組み立て)されたことが分かります。ノース・ブリティッシュ・ロコモティブ社は前述のシャープ&スチュワート社と他の2社が合併して出来た機関車会社です。1962年4月19日に破産してしまいました。
このシャープ&スチュワート社、日本へも機関車を輸出していました。「汽笛一声新橋を」、1872年10月新橋~横浜(現在の汐留~桜木町)で鉄道開業です。この時10両の蒸気機関車が輸入されました。うち4両はシャープ&スチュワート社製。シャープ&スチュワート社の機関車は他のヨークシャー社、ダブス社、エイボンサイド社、バルカン・ファウンドリー社のものよりも優秀だったと言われています。1872年10月14日には鉄道開業記念式典に日本初のお召し列車(天皇陛下が乗車される列車)を牽引しています。
2年後の1872年にシャープ&スチュワート社からはさらに2両の機関車が日本へやって来ました。うち1両は愛知県犬山市「明治村」で健在です。
→博物館明治村公式ホームページ
→SL12号について(10/21)
ダージリンで走っている機関車達、それは明治の新橋~横浜を駆け抜けた機関車達と兄弟だと思うと、一層親近感が沸いてきます。
→インドのツアーはこちら
→走る世界遺産!ダージリン・ヒマラヤ鉄道
→トイ・トレインに乗車! ヒマラヤの里ダージリンとシッキム王国の魅力に迫る!!
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