イタリア、トスカーナ地方にピエロの傑作を訪ねて
先日、「フィレンツェ芸術三昧とトスカーナ地方の休日9日間」より帰国しました。サマータイムも終わる直前、所々で葉も色付き、秋の気配を感じながらの旅行となりました。トスカーナ地方の街々を巡った後、最後はフィレンツェに4連泊という日程。ドライブ中はどこまでも続く畑にぽつぽつと赤い屋根の家々に糸杉と、トスカーナらしい長閑な風景に心癒されました。
さて、今回のツアーではトスカーナ地方の街々に残されたルネッサンスの名画を巡ります。特に印象に残ったのは初期ルネサンスを代表する画家の一人、ピエロ・デッラ・フランチェスカ(1412~1492)の作品。彼の作品は、海外の美術館等に運ばれてしまった他の有名画家の作品に比べ、20世紀になってようやくその価値が認められてきた為、彼の故郷であるこうした小さな街々に残ったのです。
特に、アレッツォのサン・フランチェスコ教会に残る「聖十字架物語」のフレスコ画はピエロの最高傑作と言われています。外見はどちらかというと質素で地味な教会ですが、中に入り、ロープで区切られた奥に進むと、この大作が壁三面に渡って描かれているのです。 「聖十字架物語」は様々な聖人伝説を元に形成された伝承『黄金伝説』が典拠となった、イエスが架けられた十字架にまつわる長い長い物語です。旧約聖書に出てくるアダムの死、ソロモン王とシヴァの女王の謁見、コンスタンティヌス帝の戦いや、コンスタンティヌス帝の母ヘレナによって長い間忘れられていた聖十字架が地中から発見された場面等、十字架にまつわる様々な場面が描かれています。数学者でもあったピエロらしく、左右の壁面に似た画面が描かれ、左右対称の雰囲気が醸し出されていますが、じっくりフレスコ画を見ていると、決して、画面の均衡だけに拘ったものではないことがわかります。画面の人物達の洋服のしわや、空けるようなレースのベール、豊かな表情、そして木の木目や背景の街並みに至るまで非常に繊細に描かれているのです。中には、ピエロの自画像とされる絵や、アレッツォの街並みも描かれていました。
私達が訪れた際は待っている他の観光客もおらず、急かされることなくゆっくりと聖十字架の壮大な物語をご覧頂くことができました。(川井)
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