篤い信仰心は時を越えて(ユーラシア旅行社で行くカンボジアツアー)
先日、ユーラシア旅行社のカンボジアツアーより帰国致しました。今回のツアーは上智大学元学長の石澤良昭先生にご同行頂き、緑溢れる夏のカンボジアとともに、近年急成長を見せるミャンマーを訪れる特別企画でした。カンボジアやミャンマーで、観光客を魅了する遺跡群。そこに刻まれた歴史やレリーフは多くのものを我々に伝えてくれますが、今回はそれを守る人々にスポットライトを当てたいと思います。
今でこそ年間多くの観光客が訪れるカンボジアにて、まだ国交がない時から石澤先生は活動を行っていました。その後、その国の人々が自らの遺跡を修復・保存していけるよう、アジア人遺跡保存官を養成する目的で、上智大学アジア人材養成研究センターが建設されました。そして、カンボジアの歴史を塗り替えたのが2001年の大発見。
研修場所になっていた12世紀建立の仏教寺院遺跡バンテアイ・クデイから、274点もの仏像が発見されたのです。今回は、その大発見の現場に立ち会った方から、貴重なお話しを聞く貴重な機会がありました。発見時の興奮を思い出すかのように語られる言葉は、我々にもその興奮が伝染し、あたかも自分も立ち会っているかのように感じるほど、臨場感溢れるものでした。発見された仏像は人工的に造られた穴に、頭部と胴体が切断された形で埋められていたそうです。しかしながら、それらの仏像は決して廃棄されたという様子ではなく、切断されながらも整然と並べられて丁寧に安置されていたそうです。仏像を廃棄する作業を行った人々は、仏に対する信仰心から仏像を無下に扱うことができず、そのように並べたのではないかと考えられています。そうした人々の思いと、廃棄場所の温度や湿度も一定だったという環境のおかげで、美しく優しい尊顔を持つ発見された仏像は、現在ではシハヌーク・イオン博物館に展示されています。
博物館では、大小様々な仏像たちが並び、ひとつひとつ異なる表情を眺めながら、アジア人材養成研究センターの研究員の方から解説を聞きました。近くから仏像を見ると、たしかに仏像の一部が切断されているものの、荒々しく壊されたという印象は一切受けず、極力仏像を破壊することなく、丁寧に切断したことが伺えました。
世界各地でその対象は異なりますが、人々の生活に深く関係している信仰や宗教。それらは信じる心が代々受け継がれて現在に繋がっています。今回のツアーでは、当時の人々の深い信仰心が歴史を越えて、現代を生きる私たちへと届けられた気がしました。(吉村)
| 固定リンク
コメント