【共通テーマデー】旅に行きたくなるおすすめの映画 『ボンベイ』
1992年、北インドの地方都市アヨーディヤーのモスクがヒンドゥー教徒たちに破壊され、それを引き金にインド全土でヒンドゥーとムスリムの流血事件が続きました。監督マニラトナムはこの事件を題材に、まだ事件の記憶も生々しい1995年、この映画の作成を発表したのです。映画の前半は、賑やかで典型的なインド娯楽映画。バラモン青年とムスリム女性が一目ぼれ、ヒンドゥーとムスリムの禁断の恋がスタート。恋といっても1990年代のインドではキスシーンなんてとんでもない!そんな破廉恥なシーンはご法度です。目と目が合うだけではにかみ、踊って歌って恋を表現します。
さて両親の反対にあった二人はボンベイに駆け落ちして結婚、めでたく双子が生まれます。二人はヒンドゥーとムスリムの友好を願い、双子にカマル(ヒンドゥー名)、カビール(ムスリム名)という名を付け、親子4人で幸せに暮らします。後半は一転、どきどきはらはらのシリアスな展開。結婚に長らく反対していた両親たちとの和解でほっと一息ついた直後、アヨーディヤー事件をきっかけとしたムスリム・ヒンドゥーの対立の渦に巻き込まれる親子。ボンベイの町で実際に繰り広げられた暴動、破壊、殺し合い、混乱が映画の中でも再現され、親子にも受難が続きます。両親とはぐれ孤児同然となり、大人たちに取り囲まれた双子の兄弟が「おまえたちはヒンドゥーかムスリムか」と問いつめられ、泣きながら「両方だ」と答えるシーンは胸がつまります。
強烈な社会風刺の映画と受けとめられた『ボンベイ』は、公開まで数々の苦難に見舞われました。政党や政治家からの反対の声も高く、何週間も検閲で止められ、一部のシーンはカットせざるを得なかったそうです。さらに、シンガポールやインドのいくつかの州や地域では上映が禁止されました。監督の自宅には、テロリストによって爆弾を投げ込まれる事件も起こっています。しかし公開後、『ボンベイ』はインド国内の映画興行収入ベスト10 に入り、インド国立映画祭最優秀作品・編集賞など数々の賞を獲得しました。 特にミュージカル・シーンの映像は高く評価され、色彩の豊かさ、計算された編集とカメラワークによる滑らかな映像は観客を引き付けてやみません。
映画の中で見られるのは、素朴で美しいインドの田舎、ボンベイの町並み、それぞれの宗教に彩られたインド人の実生活など、インド人が愛するインドの風景に溢れていて、これを見れば、きっとあなたもインドという国に行ってみたくなるはず!?インド映画には珍しく日本語字幕版が出ている映画ですので、是非ご覧になってみて下さい。(山崎)
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