イエス・キリストを活き活きと描いたロマネスク教会の壁画が面白い ~ノアン・ヴィックのサン・マルタン教会~(ユーラシア旅行社で行くロマネスクツアー)
先日、ユーラシア旅行社の「サン・サヴァンと西フランス・ロマネスク」の旅より帰国しました。今回の旅のテーマはロマネスク。ボルドーからパリまでのロマネスク教会を巡り、フレスコ画や彫刻を見学しました。
ロマネスク教会での絵画や彫刻の主題となるのは、聖書の物語が多いです。有名なところでは、「イサクの犠牲」や「カインとアベル」、「最後の晩餐」など。教会によって、作者が異なりますので、作風もそれぞれです。
ここでは、ノアン・ヴィックのサン・マルタン教会の壁画に注目してみましょう。サン・マルタン教会は12世紀創建の教会です。内部には一面、壁画が描かれています。この教会には、イエス・キリストの生涯を物語る壁画が多く描かれています。小さな教会の内部は黄色、赤、白を基調とした色彩の壁画で覆われていて、暖かな雰囲気が漂います。そして絵の一つ一つに注目すると、人物が実に活き活きと描かれています。クリっとしたつぶらな瞳、ふっくらとした頬の人物が特徴的です。「ユダの接吻」のイエス・キリストは、ユダに裏切られ捕らわれるシーンでありながら、とても生命感があります。イエス・キリスト生誕のお祝いに駆けつける東方三博士には、喜びと共に驚きが感じられます。またギャロップする馬の表情には、頑張って走ってきた様子が窺えます。そして、イエスを抱く聖母マリアは、ふくよかで丸顔。真っ赤な頬紅で、若い母親として描かれています。
この教会の絵画のひとつひとつに、まるで生命が宿っているようでした。また誇張表現を巧みに用い、リアリズムとは遠いものでありながら、力強く活き活きと描かれた絵は、日本の巨匠棟方志功に共通するものを感じました。
棟方志功は版画家として広く知られていますが、サン・マルタン教会の画家は誰であるのか不明です。この頃のロマネスク教会の装飾を築いたのは職人でした。そのため、どんなに美しい作品であっても、創作した人の名前は知られていないことがほとんどです。行く先々の教会で出会うロマネスク芸術。この作品を残した名もない芸術家たちに最大の賛辞を贈りたいと思います。(斎藤さ)

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