ショパン・コンクール入賞者のピアノの調べに感じるポーランドの景色
先日、ユーラシア旅行社の「華麗なるポーランド紀行」の旅より帰国しました。今回の旅ではコペルニクスの故郷トルンや、ポーランドの古都クラクフ、また小さな村に佇む木造の教会などを巡りました。行く先々での街中や街道沿いは、黄金色に色づいた木々がロマンチックな雰囲気を醸し出していました。バスの中でショパンのピアノ曲のCDを聴きながら旅すると、時折、窓を叩く雨さえも、詩情の世界を感じさせてくれました。
旅の最後にワルシャワを訪問しました。今年2015年は、5年に一回、ショパン国際コンクールが開催される年です。今回のツアーでは、その入賞者のコンサートを聴くことになっていました。ツアー中には、コンクールで誰が優勝するか、何を演奏するか、などの話で盛り上がり、そしてワルシャワ到着の数日前に優勝者・入賞者が発表されました。そして、いよいよコンサート鑑賞の当日を迎えました。その日は日中にショパンの生家やショパン博物館を見学し、ショパンの人生や作曲家としての活動について学び、予習は万全。そしてコンサート会場のワルシャワ・フィルハーモニーホールへ向かいました。
会場は満席。ピアニストにとって最高峰といってもよいショパン・コンクールで生まれた新たな名ピアニストを迎えようという熱気で包まれていました。入賞者6人のうち、第6位から演奏が始まりました。演奏時間は順位が上がると、少しずつ長くなります。第3位のケイト・リューはマズルカ賞を受賞しましたので、マズルカを演奏。第2位のシャルル・リシャール・アムランはノクターン賞を受賞しましたので、ノクターンを演奏。この日の受賞者コンサートは第3日で、若いピアニストたちはコンクールの緊張から解き放たれ、リラックスして楽しみながら演奏しているような印象を受けました。
そして第2位の演奏が終わった後、30分の休憩を挟み、第1位のチョ・ソンジンが登場。演奏曲はピアノ協奏曲第1番です。会場中の聴衆が温かい拍手で彼を迎えました。指揮者のタクトが上がり、導入部のオーケストラが始まると会場は緊張に包まれました。そして、チョ・ソンジンが鍵盤を叩き、ピアノが歌い始めます。とても美しく豊かな音色だと感じました。それと同時にショパンの面影が浮かんできました。旅をしながら見てきたショパンのピアノ、ショパンが通ったレストラン、黄金色に染まった森、ショパンが愛したポーランドの大地・・。演奏を聴きながらそれらが脳裏に浮かび、ショパンの人生を追体験したような錯覚を覚えました。第4位のエリック・ルーは、「雨だれ」を演奏しました。彼の演奏には、雨の降る秋のポーランドの景色がまさにありました。やさしく、そして時には激しく冷たく降り注ぐ雨。すべてショパンが愛したポーランドの一部だったのだと感じました。ポーランドを旅したからこそ感じられるショパンの演奏だったと、今も感動のうちにその演奏を思い起こすことができます。
それぞれの演奏が終わる度に、会場には喝采と温かい拍手が木魂しました。この会場の観客は5年に一度生まれる新たな名ピアニストの誕生を待ちわび、そしてコンクールを勝ち抜いた受賞者たちを讃えていました。この日に演奏した6名の受賞者の今後の成長をずっと見守っていきたい気持ちでいっぱいになりました。彼らの演奏を何年かの後に聴く日を楽しみに待ちたいと思います。(斎藤さ)
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