2016年4月 5日 (火)

アジアの山岳地域に暮らす少数民族に出会う(中国・ベトナム)

ベトナムのバック・ハーで出会った花モン族

先日、「雲南・北部ベトナム少数民族街道 10日間」の旅から戻りました。中国の南部・雲南省と、そこに国境を接するミャンマー、ラオス、ベトナムには、各国の主要民族とは別の多種多様な民族が暮らしており、このツアーではベトナムと中国の国境付近に暮らす民族の村々を訪ねます。国をまたいで旅したことで感じたのは、国境はあくまでも政治的なものにすぎないのだなぁということでした。
まずこの地域には、もともと同じ民族にもかかわらず、国境が引かれたことで呼び名が異なっているという民族があります。例えば中国の花ミャオ族とベトナムの花モン族。ピンクや赤を基調とする華やかな刺繍が印象的な民族衣装をよく見てみると「あぁ同じルーツなのかも!」と一目でわかるのです。

ベトナムのターフィン村で出会った赤ザオ族

また、今はベトナムに暮らすけれど、ルーツは中国にある民族もいます。その一つ、ザオ族は13世紀頃に祖先が中国からベトナムにやってきたとされ、ターフィン村で出会った赤ザオ族は座布団のような真っ赤な頭巾を頭の上にのせているのが特徴的。このザオ族の起源として有力なのが、中国ではヤオ族と呼ばれている民族。中国雲南省の金平という町の郊外・太陽寨には、ヤオ族の一つである紅頭ヤオ族が暮らしており、形は三角ですが色はやはり赤い帽子を被っています。両民族には「女性が剃髪する」という共通の風習も残っていて、なるほど、起源は同じなのかもと思ったわけです。
そして、現在のベトナム北部地域は、約1,000年もの期間を中国に支配されていた歴史上、漢字が残されている歴史的建造物が多く見られます。北部の食文化にも中国の影響が少し残っていて、そういえば国境を越えても食事にあまり大きな変化はなかったなぁと、後になって思ったものです。
とはいえ、その国境を境として異なっていたこともあります。それは“外国人に対する意識”です。ベトナム、特にサパを中心とする地域はフランス人の避暑地として長らく外国人とのなじみがあったからか、観光客に対して物怖じすることがなく外交的。また、自分たちの伝統的な刺繍や藍染めを土産物として積極的に販売しています。
一方、中国は、ベトナムよりもやや内向的な印象。特にご年配の方は外の人間に対して抵抗があるようで、微笑みかけても真顔で応えるのみ。カメラを向けようものなら途端に奥へ隠れてしまいます。市場を訪ねた時も、目が合うと顔を横に向けたり、手のひらで顔を隠したり。ガイドによると、外交的でない一面に加え、写真については「魂も一緒に取られる」という迷信があるそう。昔の日本もそうだったよなぁとか、外国人に抵抗があるのは日本も同じだわぁとか、知らない人に写真撮られるのはそりゃ嫌だよねぇなど、皆様、色々思うところがあったようです。
そんな違いはあれど、どの村でも、女性たちがひとつひとつ丁寧に民族衣装を作り上げている姿は最も印象的でした。現代的な生活様式も徐々に取り入れられるようになった中、母から娘へ、伝統の刺繍や染め物の技術とデザインを受け継いでいるのは中国もベトナムも同じでした。これからも各民族の伝統が長く守られてほしいと思います。(江間)

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