雪の積もる天山山脈と幻の不凍湖イシククル、玄奘三蔵の跡を追って(キルギス)
先日、「遊牧の大地を行く、カザフ・キルギス紀行9日間」のツアーから帰国しました。案外知られていませんが、カザフスタンは世界で初めて月面着陸に成功したガガーリンが乗るボストーク1号が打ち上げられたバイコヌール宇宙基地や2017年に万博開催予定で日本人建築家・黒川紀章が設計した未来都市アスタナを首都とする国です。一方でキルギスは10万年以上存在する世界でも数少ない古代湖イシククルを擁し、実は遊牧民族の移動式住居ゲルの発祥の地でもあります。今回は、そんな注目の中央アジアの2カ国、カザフスタンとキルギスを訪れるツアーでした。
このツアーで一番印象に残っているのはその雄大な自然。万年雪を抱く天山山脈やまるで赤いカーペットを敷いているかのように一面に咲き誇るポピーの花、牧草を探しながら道路上をも移動する牛や羊の群れ、そしてコバルトブルーに輝く幻の湖イシククル。
イシククル湖と言えば中国・唐の時代、玄奘三蔵が経典を求めてインドへ出かけた際、その旅路中に訪れたことでも有名な湖です。玄奘が帰国後に記した「大唐西域記」にも大清地という名で登場しています。
イシククルとはキルギス語で熱い海という意味。塩分が強く、氷点下を下回る冬でも凍らないことからその名がつけられました。琵琶湖の約9倍の大きさを持ち、ペルーのチチカカ湖に次いで世界第2位の高山湖、ロシアのバイカル湖に次いで世界第2位の透明度を誇ります。不思議なことに、湖には周囲の山々から118もの河川が流れ込んでいるにもかかわらず、流れ出る川は1本もありません。また、海底からは様々な出土品が引き上げられ、遺跡が今でも湖の底に眠ったままになっている、なんとも浪漫溢れる湖です。
外国への旅行が禁じられていた唐の時代、禁を破りインドへの旅へ出た玄奘は、中国から標高4000mを越える天山山脈のペデル峠を越えてキルギスへ入りました。極寒の天山越えで何人もの従者や牛馬を失った玄奘が美しいイシククル湖に辿りついた時、どのように感じたのだろうかー。と思いを馳せながら、湖を眺めるのもまた浪漫。
今回は残念ながらなかなかお天気に恵まれない日々が続きましたが、思いが届いたのかイシククル湖を離れるラストチャンスの日は見事に晴天!水はまだ冷たかったですが太陽の光が暖かく、湖も一段と輝いて見えました。(日裏)
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