2016年5月25日 (水)

「シク村」 ~ルーマニアの中のハンガリー~

シク村の民家の内装

先日、「フォークロアの郷、ルーマニア紀行 10日間」の添乗から帰国しました。共産主義の波も届かなかった田舎の村々をまわったこのツアーでは、とくにルーマニアの人々の素朴な笑顔が心に残っています。
スラヴ系民族が多い東ヨーロッパにありながら、ローマ帝国による支配という歴史的背景から東欧唯一のラテン系の人々が住む国・ルーマニア。
今回私たちが訪問したのは、ルーマニアでは少数民族であるハンガリー人が暮らす「シク村」です。10世紀頃からの入植以来約1000年の間ハンガリーとのつながりを強く持ってきたこの地方でも、とくにハンガリー文化を色濃く残すといわれているこの村では、村の方のお宅にお邪魔し、白地に赤い糸の刺繍が施されたカーテンや、同じ色彩の絵皿・家具などの伝統的な暮らしを見せていただきました。絵皿の絵付けはもちろん、今も現役の家具もすべて手作りなんだそうです。それもそのはず、実は現在、ハンガリーでもこれほどの完成度の刺しゅうができる職人はおらず、本国からの注文が絶えないという凄腕の職人の村なのです。
そんな貴重な村の伝統を見せていただいたお宅では、その前に一家の手作りの昼食をいただきました。長い移動の後に、お庭に組んだ鍋でことこと煮込んだハンガリーのシチュー“グヤーシュ”風のシチュー「ボグラチ」に舌鼓。似てはいると思っても、うっかり「グヤーシュに似ているね」なんて言ってはいけません。これは、この村だけの伝統の味なのだそう。この日ばかりはどのテーブルもお代わりが続出で「このおうちでお代わりをしないお客様はいませんよ」とにこにこしながらガイドさんが教えてくれました。村の自慢の味が大好評で、一家のおじいちゃんも満面の笑みでした。
いま、経済発展に伴い若者の都市への流出が社会問題化しているというルーマニア。しかしその流れに逆らうように、シク村のハンガリー人の若者たちは村に戻る者も多いといいます。それは気心知れた豊かな村での暮らしやすさゆえとも、ルーマニア人社会での疎外感ゆえとも言われていますが、外国人が珍しいルーマニアの奥地で共通の言葉がなくてもいっぱいの身振りとまぶしいくらいの笑顔で私たちを迎えてくれた人たちがいるこの村は、たった数時間滞在した私も離れがたくなってしまうくらい、あたたかい時間が過ごせる場所でした。
崩れそうなお天気に気を取られながらも、また来たいという思いを胸に村を後にし、旅路につきました。(松永)

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