2016年7月 8日 (金)

宗教改革の痕跡

セントアンドリュース大聖堂

先日、「英国物語15日間」のツアーから帰国いたしました。エジンバラから始まり、北はインヴァネス、南はロンドンまでとブリテン島をぐるっと1周する欲張りなツアーです。
英国各地を旅すると、本当に沢山の修道院や大聖堂の廃墟が点在していることが分かります。これらは、16世紀のヘンリ8世が行った宗教改革の産物です。ヘンリ8世は自身の離婚問題が原因でローマ教会と決別し、イギリス国王を最高の首長とするイギリス国教会を設立しました。そしてローマ教会との結びついている修道院を、次々と廃止してその力をそぐと同時に、国王の財政を強化することを狙ったのです。廃墟を見るたびに、この宗教改革のあおりをひしひしと感じます。
その中でも、私が一番心うたれた廃墟は、スコットランドにあるセントアンドリュース大聖堂。かつてスコットランドで最大の大聖堂だったと言われています。この大聖堂は、北海に面しており、海からの寒風に打たれながら佇むその姿は、廃墟だからこそ美しく、また完全な姿を想像すると、どんなに素晴らしい大聖堂だったのだろうかと、いつまでも想いを馳せてしまいます。
大聖堂の敷地を出て、海岸線の望める場所まで行くと、すぐ近くにセントアンドリュース城が見られます。この城も度重なる戦と宗教改革の渦に巻き込まれ廃墟となり、そのまま残されています。
ここで私はふと疑問に思いました。なぜこんなにも多くの廃墟が現在も残っているのか?ある現地ガイドさんによると、どうやらその理由の一つに、日本と異なり英国は、地震や台風といった自然災害が少ないこと。そして二つ目に、18世紀に入ってからイギリスで流行したピクチャレク(絵のようなの意)という美的意識に組み込まれ、廃墟の保存活動が始まったということ等が挙げられるのではないかとのことでした。
この悲しげな廃墟の姿から、時を越えた過去からのメッセージを感じます。そしてより一層、彼らが英国の美しさを際立たせている事に気づくのです。(堤)

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