大西宇宙飛行士の旅立ちをお見送り!ソユーズロケット打ち上げ生見学(カザフスタン)
2016年7月7日の七夕の朝、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から、宇宙飛行士3名を乗せたソユーズロケットが打ち上がりました。日本人宇宙飛行士の大西卓哉さんが搭乗していたこともあり、今回の打ち上げは日本でも大注目でしたが、この打ち上げを宇宙基地で見学する「宇宙基地バイコヌール ソユーズ打ち上げ見学」のツアーが実施され、先日無事に見届けて帰国しました。
今回のツアーは発表から2度の延期を経ての出発。皆様、否応なしに打ち上げへの期待は高まっていました。私自身はというと、正直、これまで宇宙やロケットに関心はあまりなかったのですが、行くならば最低限の勉強はせねばと筑波宇宙センターへ見学に行ったところ、解説の方のお話にすっかり魅了されてしまい、にわか宇宙ファンになったほどです。人間、いつ、どんなタイミングで新しい物事に関心が湧くかわかりません。
ツアーは7月5日に日本を出発して中央アジアのカザフスタンへ。7月6日の夕方にバイコヌールへ入ると、砂漠の中の小さな町は、打ち上げを見学に来た人や各国のメディア、関係者の人々ですでに賑わっていました。外国人だらけです。とはいえ、すれ違う日本人はメディア関係者が多かったように思います。
打ち上げへ当日、本番へ向けてのカウントダウンは6時間前から始まります。今回の打ち上げは現地時間7時36分でしたので、逆算すると1時36分。それに合わせるために、ホテルを出発したのは0時30分でした。この先は決められた時間通りに進んでいくので、事前に時計の時刻合わせは必須です。
<打ち上げ6時間前-お見送り>
ホテルを出発し、まずは町中にあるコスモノートホテルへ。ここは宇宙飛行士たちのバイコヌールでの滞在場所であり、訓練所でもあります。その為、一般人は入れません。打ち上げ6時間前の1時36分、3名の宇宙飛行士がホテルから出発して基地へ向かう“お見送り”です。ホテルを出て、手を振りながらバスに乗り込む彼らに声援を送ります。
バスを見送ったあと、おまけで、ホテルの敷地内にある“宇宙飛行士の並木道”へ。これまで、ソ連・ロシア製のロケットに搭乗した宇宙飛行士たちは、飛び立つ前にここに植樹をするのだそうで、数日前、大西さんたちが植えた苗木も見つけました。七夕だからでしょうか、短冊もついていて「ミッション成功祈願」と書かれていました。もちろん、この並木道には、55年前にガガーリンが植えた木も堂々と立っていました。
その後、私達も車に乗って、町から約40km離れた宇宙基地へ。打ち上げまでの時間を利用し、基地内の博物館を見学します。ソ連時代からの宇宙開発に関する資料や、ロケット模型、ガガーリンを筆頭とする宇宙飛行士たちのサインやパネル写真などなど、どれも見ていて飽きません。
<打ち上げ3時間前-出発式>
打ち上げ3時間前が近づいたので、基地内の“254番ビルディング”へ。3時間前の4時36分、宇宙服に身を包んだ宇宙飛行士たちの“出発式”です。ロシア宇宙局の偉い人に一言挨拶し、バスへ乗り込んで行きました。これを終えると宇宙飛行士たちはいよいよロケットへ移動し、乗り込むこととなるので、私たちが彼らに直接声援を送れるのはこれが最後。大西さんは3人の中で一番ガッツポーズをしていて、並々ならぬ意気込みを肌で感じることができました。
<打ち上げへのカウントダウン>
夜が明けた6時頃、私たちは早々に打ち上げ見学ポイントで待機することにしました。今回のソユーズ打ち上げは、基地内の“1番発射台”から。55年前、ガガーリンが乗ったボストークの打ち上げにも使われた由緒ある発射台です(55年も使われていることに驚きました)。見学ポイントまでは、僅か1.4km!肉眼でもソユーズの姿が良く分かる距離です。待ち時間を利用して、カメラの望遠を調整したり、試し撮影をしたり・・・。周りでは各国のテレビクルーが中継のリハーサルをしていたりもします。お互い、準備に余念がありません。
打ち上げ30分前。ソユーズロケットを覆うように支えていた支柱が外され、全容があらわになりました。もうあそこには3人の宇宙飛行士が乗っているのかと思うと、不思議な感じです。
打ち上げ20秒前。いよいよエンジン点火!ここからはもう目を離せません。湧き上がる煙の勢いがどんどん増していきます。まだ最大出力ではないので、この時点ではそれほど音はしません。
<7時36分41秒 打ち上げ>
エンジン点火の合図があったとはいえ、それは突然でした。バリバリバリバリッという耳をつんざく轟音と、全身を大きく震わす振動を感じた瞬間、ソユーズはすぅっと空に向かって真っすぐに上がっていきました。男らしい爆音と振動とは反対に、雲ひとつない空に上がってゆくソユーズのシルエットには女性的な美しさが感じられ、それは生で打ち上げを見たことで初めて知る感動!一方、あんな乗り物(?)に、人間が乗っているということがにわかに信じがたいくらいの衝撃もあり、色々な感情が一気に襲ってくる不思議な体験でした。開いた口が塞がらない、想いが言葉にでない、まさにこういう時のことを言うのだと。
51時間後、ソユーズは無事に国際宇宙ステーションにドッキングし、大西宇宙飛行士の活動も本格的に始まりました。打ち上げを見送った瞬間から、もうなんだか“知り合いが宇宙に行った”ように勝手に思ってしまい、日々、活動に注目しているのは言うまでもありません。「一生に一度の体験」と思い、かの地に出かけましたが、早くも次を見たくなっています。人生に、新しい世界が広がったような気がします。(江間)
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